産業春秋／“二刀流”のびのび育てる

「二刀流に関してはベーブ・ルースより上」と、米国の名物コラムニスト、ジョン・モロジさんがエンゼルスの大谷翔平選手を絶賛していた。『野球の神様』を超える活躍に全米から熱い視線が注がれる。

子どもの頃は遠足の直前に熱を出す、ひ弱な体質だった。花巻東高校では大事な試合を控え、ケガをしたことも。関西の強豪校ならついていけず、つぶれていたかもしれないと親御さんが回想している。

試合を欠場しても次の試合ではレギュラーで活躍できる。のびやかな土地柄で家族や指導者に恵まれたから天賦の才は開花したのだろう。今も当時の延長線上で心底野球を楽しんでいるようにみえる。

精神科医の斎藤茂太さんは著書で親の行き過ぎた願望を戒める。「子どもの成長はゆったりと見守ってあげよう。『早く、早く！』ではなく『大丈夫、ゆっくりでも』とゆとりある気持ちで（中略）親は子どものやる気や試みを横取りしてはいけない」。

企業の人づくりもしかり。優れた人材は促成栽培できず、失敗に寛容な組織でなければ育たない。ゆっくり成長する力はたくましい。銘木は時間をかけ、大地にしっかり根を張り、引き締まった年輪を刻みながら大きくなる。