(2022/8/4 05:00)
スタートアップの創業を促すことで、賃金の上昇や女性活躍の機会を増やし、持続可能な経済成長につなげたい。
岸田文雄政権はスタートアップ担当相を新設し、山際大志郎経済再生担当相が兼務する人事を1日に発令した。これまでスタートアップ政策は経済産業省、文部科学省、総務省、内閣府など各省庁に予算や権限などが分散していた。スタートアップ政策を一元管理する司令塔機能が明確になったと評価したい。
政府は年末に向けてスタートアップを5年で10倍に増やす「スタートアップ育成5カ年計画」の策定を本格化させる。山際担当相には計画策定に向け、関係閣僚との調整でリーダーシップを発揮してもらいたい。
政府は予算編成でもスタートアップ支援を重視する。2023年度予算編成の概算要求基準では、スタートアップへの投資を重点的に予算措置する「重要政策推進枠」での扱いや事項のみの要求を認めた。財政状況が厳しい中にあって、積極的な財政支出の意向がうかがえる。メリハリを利かせた効果的な施策の実現が求められる。
日本が持続可能な経済成長を果たすには、スタートアップの創業だけでは不十分だ。岸田政権の看板政策「新しい資本主義」実行計画ではイノベーションの源泉をスタートアップの創業としつつ、既存の大企業とのオープンイノベーションを行える環境整備が重要と指摘する。また1日付で内閣官房内にスタートアップと海外の大学との連携を促す「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想推進室」を設けた。大企業や海外大学との連携を成長に結びつけたい。
日本のスタートアップの課題は欧米に比べて開業率が低い点だ。創業時に経営者の個人保証を必要とする融資制度が一因となっている。起業に関心がある層が考える失敗時のリスクは、約8割が借金や個人保証を抱えることだという。政府は信用保証協会の保証があれば、銀行など民間金融機関が経営者に個人保証を求めない制度を創設する方向で検討している。リスク緩和が創業を促すと期待したい。
(2022/8/4 05:00)