社説/COP27の宿題 危機共有し、一段の排出削減を

(2022/11/23 05:00)

エジプトで20日閉幕した国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で、温暖化による途上国の「損失と被害」を支援する基金を創設することで合意した。先進国が大量に排出した温室効果ガス(GHG)の影響で、洪水や干ばつなどの気候災害を被っている途上国を支援する。資金負担を理由にこれまで創設に反対だった先進国が合意に転じた。危機感を共有できたものと評価したい。

一方、温室効果ガスの一段の削減については進展がみられなかった。ウクライナ情勢に伴ってエネルギーの調達問題を抱える中、「すべての化石燃料の段階的な削減」は合意文書に盛り込まれなかった。ただ、世界の平均気温の上昇を産業革命前比で1・5度Cに抑えるには時間的な猶予がない。温室効果ガスの2大排出国である米中をはじめ、各国は気候変動危機への結束をあらためて強化したい。

「損失と被害」を被る途上国支援の基金の詳細は、2023年のCOP28で決める。支援する国の対象や、基金に資金を拠出する国の対象などが焦点になる。中国や新興国、産油国を資金拠出国に組み込めるのか、議論の難航も想定される。粘り強く一致点を模索したい。

今夏、温暖化と記録的な大雨の影響で、パキスタンの国土の3分の1が水没した。気候変動危機は確実に進行しているものの、今回のCOP27では一段の温室効果ガス削減策を打ち出せなかったのは非常に残念だ。

「1・5度C目標」を達成するには、2010年比で温室効果ガス排出量を約45%削減する必要がある。だが現状の各国の対策のままでは、30年の排出量は10年比で10・6%増(国連気候変動枠組み条約事務局調べ)と、むしろ増加する現実に危機感を強めたい。環境対策は待ったなしの状況にある。

2大排出国の米中は14日の首脳会談で、気候変動対策で対話を再開することで一致した。日本は再生可能エネルギーの主力電源化を目指しつつ原子力発電を最大限活用するほか、環境技術を世界に広く発信し、気候変動対策での貢献度を高めたい。

(2022/11/23 05:00)

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