社説/非正規雇用を考える 処遇改善で物価・少子化対応を

(2023/1/30 05:00)

物価高と少子化に対応するには、全労働者の4割を占める非正規雇用労働者の処遇改善が欠かせない。正社員と所得格差がある非正規労働者は、経済的な不安から未婚率が正社員より高い。物価上昇を上回る賃上げで経済好循環を回しつつ、少子化にも歯止めをかけるには、正社員にとどめない非正規労働者への配慮が企業に求められる。

厚生労働省によると2021年の非正規労働者の割合は36・7%に達する。だが正社員の月給は21年に平均約32万円だったのに対し、非正規は約22万円と格差が著しい。政府の全世代型社会保障構築会議が22年12月にまとめた報告書では、非正規労働者の処遇改善と短時間労働者へのさらなる支援が、少子化対策につながるとした。非正規労働者の未婚率は30代後半で7割、40代後半で6割との調査もあり、経済的不安を払拭する効果的な施策を講じたい。

岸田文雄政権の「異次元の少子化対策」は、児童手当の増額や、非正規労働者らも児童手当の給付の対象とする制度の新設などを想定する。だが育児支援以前に非正規労働者が抱える雇用や経済面の不安を拭わなければ大きな効果は期待できない。

同一労働同一賃金の検証とガイドラインの見直しのほか、契約が5年を超える有期雇用契約の無期雇用契約への転換「無期転換ルール」の実効性確保と雇い止めの防止など全世代型社会保障構築会議が提起した課題を丁寧に講じてもらいたい。また企業が非正規労働者の待遇改善の状況を非財務情報の開示対象に加え、企業の取り組みを促すべきとの指摘も具体化したい。

バブル崩壊後の就職氷河期世代である40―50代前半は初職が非正規雇用というケースが少なくない。企業は低成長の「失われた30年」で非正規を雇用の調整弁とした側面があり、非正規の正社員化も容易ではない。企業は学び直しや職業訓練などの人材投資により非正規のスキルアップを図り、正社員化や処遇改善につなげたい。勤務時間や勤務地、職種・職務を限定した多様な正社員制度の導入も、政府は企業に促してもらいたい。

(2023/1/30 05:00)

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