東芝の若き技術者たち ~デジタル世界に建つビルが、建設現場を変えていく~【PR】

(2021/5/27 05:00)

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この記事の要点は...

■デジタルで技術者をつなぐ、先進の建築設計手法BIMとは?

■ビルのライフサイクルすべてでの設計時データ利用を目指し、成長を続ける技術

■若い社員への信頼が、イノベーションを生み出す力

長年にわたって続いてきた習慣の多くは、もっとも効率のいい手順であったり、成功率の高い方法であったりする。うまくいっているなら、あえて変える必要がないと言い切れるものがあるのも事実だ。しかし、そんな習慣に身を任せることをやめ、「果たしてこのままでいいのだろうか?」と問うてみることがイノベーションにつながることもある。

建設業界を変える新しい建築設計手法は、3次元の仮想モデルの中にある

巨大な建造物といえども、鉄骨とコンクリートだけで作られているわけではない。窓もあれば扉もある。快適性を支える様々な設備も必要となり、エレベーターやエスカレーターもその一つである。こうした様々な要素によって建物は構成されている。

「建物の枠組み、窓や扉、照明、エレベーターなど、各企業が設計した何百枚という設計図をお互いに確認し、部材の干渉部などを調整しながら建築設計は進みます。それでも後工程で『こんなはずじゃなかった』ということが発生し、時には現場で職人さんになんとかしてもらう…なんてことが起きることも。こうした行き違いを、BIM(Building Information Modeling)によって解決することを目指しています」

そう語るのは、東芝エレベータ株式会社の加藤裕子氏だ。

  • 東芝エレベータ株式会社 情報戦略システム部 デジタルトランスフォーメーション推進担当 主任 加藤裕子氏

BIM(ビム)とは、専用の設計システムを使ってコンピュータの中に「モデル」と呼ばれる仮想の建築物を作る設計手法である。モデルは、従来型の設計手法では製図後は個別に管理されていた各要素の2次元の設計図を、3次元の設計データとして一つのプラットフォーム上で組み合わせることで、デジタル世界の建築物として組み上げられる。モデルによって、プロジェクトに関わる誰もが建物の完成イメージを容易に理解することができる上、これまでは実際に施工するまで分からないこともあった各要素の接続部分の問題点などを設計段階で知ることができるという利点がある。東芝エレベータでは、建築計画や基本設計向けに、エレベーターやエスカレーターのBIM部品を提供するとともに、実施設計、施工、建設現場といった各段階で、建設業と連携したBIMの手法を展開している。

  • 建築フェーズに応じたBIMサービスの概要

「エレベーターやエスカレーターを建物に納める設計業務にBIMを活用することで、お客様とのやり取りの効率化や社内業務の改善、改革を推進しています。私の仕事は、BIMで利用する3次元CAD(Computer-Aided Design)ソフトウェアの開発や、設計データを全社的に活用するシステムの開発です」

建築設計では、前述のような建物を構成する様々な要素の設計以外にも、プロジェクトの進行に合わせてLOD(Level Of Detail:詳細度)の異なる複数の設計図が必要となる。初期の企画段階では、比較的LODの低い計画図面で進められるが、施工時にはLODの高い設計図が必要となる。建築設計のみならず、建物のライフサイクル全般でモデルを活用する際にポイントとなるのが、このLODだ。

「LODの低い初期の設計図を、その後の工程に活用できるような仕組みを目指しています。進行に合わせてシームレスにLODを上げていけるようなシステムならば、各工程で作られた設計図をその後も役立てることができます。どの設計図も、技術者が一生懸命作り上げたものですから大切にし、新しい価値の創造につなげたいと考えています」

BIMとともに成長してきた10年

加藤氏が設計図やそれを作った技術者に思いを馳せるのは、育った環境にあるという。

「私の家は、電気工事会社でした。だから、家にはいつも図面がありました。当時は紙の図面でしたので、不要になった青焼き図面の裏に、絵を描いたりして遊んでいたのを覚えています。同時に技術者の方たちが図面に向かう姿を見て育ちました」

電気工事技術者だった家族の影響もあり、数学やモノづくりに関心があった加藤氏は、大学で材料工学を専攻する。卒業研究のテーマは、ハードディスク表面にラジウムを塗布することで、記憶容量を上げるというものだったそうだ。ハードディスクの研究をしていたこともあり、加藤氏は就職先としての東芝に興味を持ったという。

「工場見学で、大学のOBと話す機会がありました。『何でも聞いてくれ』というので就職活動全般について相談すると、そのOBは突然『自分に自信を持ってアピールする姿勢が足りんぞ!』に始まって、私の就職活動全般にダメ出しをしてきたんです。最初は少し驚いたんですが、だんだんとその方の人柄と、そんな人が働いている東芝エレベータという会社に惹かれていきました」

現在、加藤氏はBIM専任の技術者として、新入社員や若手技術者を含むBIM推進部門の中核を担っている

「開発システムの範囲が広く、アプリケーションも多数に及びます。カナダや米国に出張して世界的にも先進的な技術を取り入れるなど、自分自身も技術者として日々成長しながら、後進の育成にも力を注いでいます。私にも新入社員の頃がありましたし、大勢の先輩に指導してもらえたことへの恩返しになると頑張っています」

東芝エレベータがBIMの研究に着手したのは、加藤氏が入社した2008年のことだ。そして、翌年2009年には業界に先駆けてBIM支援サービスの運用を開始している

「私は2008年の入社で、2年目からBIM関連の業務に関わってきています。気がつけば、ずっとBIM一筋にやってきたんだなぁと、感慨深い思いもありますし、自信もあります。最先端の技術を使うということもあり、スケジュール通りに進まないこともありましたが、ようやく成果を出せました」

加藤氏が誇らしげに語るように、2020年12月、約2年にわたり加藤氏が開発してきたシステムが完成し社内での運用が始まった。どんなに想定と違う事態になっても臨機応変に対処し、自身の依頼事項の背景にある意図も丁寧に説明しながら社内外と調整してきた成果だ。

「今回のプロジェクトでは、コミュニケーションの大切さを実感しました。そして、人と話をすることの好きな私が、力を発揮できた仕事だったとも思っています」

プロジェクトの最終段階で、思うようにデータの連係ができないことがあったという。その時に、どのフェーズに修正しなければならない個所があるのかを確認するため、一つひとつのフェーズで担当者と話をしなければならなかったという。

「端から見れば地道な作業だったと思いますが、ちょっと楽しんでいた私がいたのも事実です」

加藤氏は、ほほ笑みながら当時を振り返るように語った。ゴール目前でのトラブルは、本来ならばプロジェクト全体の士気に関わる問題だ。しかし、加藤氏は持ち前のコミュニケーション能力で見事に解決に導いたのだ。そして息つく間もなく、現在はさらなる適用拡大を目指した開発に着手しているという。加藤氏は、そんなBIMをまだスタートラインに立ったばかりの技術と語る。

  • 在宅勤務が中心となる中、出社した際はコミュニケーションを従来以上に大切にしているという

「東芝エレベータがBIMという新しい分野で業界のトップグループを走っていられるのは、厳しい市場環境の中、経営幹部が事業の将来性を見込んでBIMに取り組む社員を信頼し、投資してくれたからだと思っています。だから、それに見合う価値を生み、東芝エレベータの成長のためにも、もっと大きく羽ばたく技術にしたいと思っています」

そう答える加藤氏は、東芝が掲げる理念体系の中にある「変革への情熱を抱く」という言葉が好きだという。加藤氏は、BIMによって進む、建築業界のイノベーションのまっただ中にいられることを誇りに感じている。

「これからも発展していく技術と一緒に、自分も技術者として成長し、社会に貢献していける醍醐味を味わえる。そんな環境を楽しみながら前進していきたいと思っています。」

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    本記事は東芝の最新技術などを紹介する「Toshiba Clip」より転載しております。また、その他の東芝関連の記事は東芝×日刊工業新聞「Journagram」(https://www.nikkan.co.jp/jm/toshiba)でもご覧いただけます。

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