ソフト開発と中小企業診断士、組み合わせで新たな価値【PR】

(2020/1/13 05:00)

  • 中小企業診断士の間野佐知子さん(右)と佐々木靜さん

 中小製造業向けの生産管理システム開発などをするテクノア(岐阜市)は、正社員230人ほどの企業だが、中小企業診断士6人が所属している。この規模の会社としては業界では極めて異例の存在だ。山﨑耕治社長は、「我々はソフトウェアの開発をしていますが、機能と価格の勝負はしたくありません」としたうえで、「当社の理念はITを使い、顧客である日本の中小製造業の体質や収益を改善することです。中小企業診断士という資格は、当社の事業に相乗効果をもたらすうってつけの資格です」と強調する。ソフト開発と中小企業診断士という一見、関連がなさそうな組み合わせが新たな価値を生み出そうとしている。

 中小企業診断士は、中小企業が適切な経営のための診断および助言を行う存在で、国家資格。中小企業診断協会のHPには、その役割として、「企業の成長戦略の策定について専門的知識をもってアドバイスします。また、策定した成長戦略を実行するに当たって具体的な経営計画を立て、その実績やその後の経営環境の変化を踏まえた支援も行います」と記載している。同協会によると1次、2次試験の合格率は共に20%台。合わせると4%ほどの狭き門だ。しかし、実際に独立し、コンサルタントとして活躍するのは2割弱ほど。大手企業に勤務している人がスキルアップや自己啓発のため資格を取得したものの、休眠してしまう資格者も多い。近年、事業承継が社会問題化しているため、需要は大きい。

生産管理ソフト導入で終わらない経営支援

 テクノアは、中小製造業向けの生産管理システム「TECHS(テックス)シリーズ」などを手掛ける。テックスシリーズは個別受注・多品種少量生産に適し、工程の進捗(しんちょく)や仕掛かり中の原価を即時把握できるのが特徴。経営者にとって経営に必要な数字を得られることへのニーズは高い。

 

 診断士の資格を持つ、ソリューションサービス部課長の間野佐知子さんは、テックスを導入してもらうには、「中小製造業の経営者の方を説得し、ご理解していただくことが大切です。そのために診断士の資格は生きるなと思いました」と資格取得への動機を語る。資格取得のため、就業時間後に参考書を読み、土曜日は名古屋市の予備校に通う日々。会社と家族の協力もあり、学び始めてから1年半後に合格を果たした。間野さんは、「診断士の資格を持っていると経営者の反応が違います。診断士の資格がお客様に安心感を与えると感じています」と語る。

  

 ソリューションサービス部グループリーダーの佐々木靜さんも、診断士の資格を持つ社員の1人だ。もともと佐々木さんはテックスのインストラクターとして導入を支援したが、「経営者とお話する機会が多く、何のためにこのソフトが経営にいいのか、基本的なことを学ばないといけないなと思って」と受験を決意したという。佐々木さんも予備校に通い、2次試験を3回目で合格を果たした。

 佐々木さんは資格の取得後、「診断士同士の人脈がすごく増え、お互いの得意分野で情報交換をしたり、相談をしあったりと、とても勉強になっています。入る情報が増えた結果、顧客に提供できる情報も増え、提案の幅が広がりました。取得前とはものの見え方が違います」と強調する。

 一般的に診断士は業務改善の知識を持ち合わせていながら、改善を実行する仕組みまでは持たないことが多い。テクノアでは、テックスシリーズを用いる業務の効率化を提案する際、診断士としての知見を組み合わせることで、一般の診断士が対応しきれない中小製造業の顧客の信頼をつかんでいるようだ。

 現在、厳しい国際競争にさらされる日本の中小製造業にとって、生産性の一層の向上は避けては通れない課題となっており、IT化の推進も必須だ。しかし、山﨑社長は「結局のところ、ITはツールでしかありません。我々のソリューションを通じて、日本の中小製造業が持つノウハウを残していく手助けをしたい」と語る。

 実際、テックスシリーズを導入するため、業務全般の見直しのほか、IT化を進めるため、幹部候補をプロジェクトリーダーに据えて人材教育も兼ねる企業もあった。さらに、創業社長から代替わりした2代目経営者が事業承継と同時に、IT化に取り組む事例も増えているという。

 

 間野さんは、IT化に向けて「経営者の考えを社員の方に伝えたり、逆に社員の考えを経営者に伝えたりと、第三者的な立場から両者の考えの橋渡しをすることもあります」と述べる。単なるソフトの販売だけでなく、経営のあり方にまで立ち入ってアドバイスすることが重要となるようだ。

  • 山﨑耕治社長(左)と談笑する中小企業診断士の2人

 診断士への顧客からの反応について、山﨑社長は「診断士は中小企業の経営を数多く見てきた経験があります。経営者の方はその経験に信頼感を持ってくれています。診断士の経験がテックスシリーズの導入価値を高めてくれているのではないでしょうか」と指摘する。

 テクノアでは全社的に診断士の資格取得を奨励しており、2年ほど前からは診断士の資格を取得した社員に対し、給与に月額5万円、年60万円の手当を盛り込んでいる。来年の5月には診断士の資格を持つ社員がさらに1人誕生し、合計7人になる見込みだ。資格を取得した社員たちが社内外で活躍の場を広げ、その姿を見た社員がさらに資格取得を目指す。そういった好循環が社内で生まれつつある。

 優れたソフト開発力と、中小企業診断士に代表される経営への提案力を両輪に、テクノアは中小製造業のパートナーとして歩み続けている。

(2020/1/13 05:00)

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