MF-TOKYOの歩き方

【特集】現場で役立つ!新人のためのプレス用語集解説:プレス業界注目キーワード編次世代の現場技術・技能者になるためのキーワード

塑性加工教育訓練研究所 小渡邦昭

図1 考える現場技術・技術者を目指そう

まさしく 現代は

 日々、何気なく利用している「スマートフォン」だが5年、10年単位で遡って考えてみると、スマートフォンによって非常に便利な環境がつくりだされていることに気付くだろう。同様にプレス加工現場で働く方々の作業環境においても、日々、新しい機器が導入されていると思われる。

 こうした状況において、時として、スマートフォンをはじめとする「人々の生活を支える」道具の操作に必要以上の時間を割かれることがある。結果として、「道具に我々が使われている」という事態が生じていると感じることはないだろうか。

 つまり、人と時間にとらわれないで効果的に連絡・意思疎通を行う「目的」のために、スマートフォンという「道具」を利用することが本来の姿ではないかと考えられる。

もう一度考えてみよう

 同様なことは、プレス加工現場でも生じている。
加工トラブルを微妙な加工状態や条件の変化を感じる「センサ」により、トラブルを未然に発見する状況では、「トラブルを未然に発見する」ことが目的となることがある。その手段として「センサ」を利用していると。しかし、プレス加工を俯瞰すると第一義的に考える理想は、トラブル自体が生じないことである。つまり、この状態では

○「目的」:センサが必要なく、トラブルが発生しないこと。
○「手段」:目的を達成させるために、センサなどを利用して、本質的なトラブルの原因を探し出す。

ことではないだろうか。

 とはいえ、否応なく我々を取り巻く環境は、日々進化して、それらかの恩恵を「すばやく」「的確に」に受けるためには、我々自身が、その流れを確実に把握することが大切である。このプロセスを間違えると、前述の「目的」と「手段」が混乱して、せっかくの「技術革新」が、最悪の場合、「業務低下」につながることもある。

基本に戻って

 すなわち、現在の状況を的確に本質を理解するためには、「トレンドワード(新技術用語)」を見過ごさず、理解することが、必要不可欠である。

 ここでのポイントは、「理解すること」である。 たとえば、「IoT」は、「ものインターネット」と訳されることがあるが、これだけで理解できる方は少ないと思われる。つまり、この用語の本質を理解するために、「現状において、人の営みをどのように支援するか」から考えることが必要となる。

 具体的には、
①冷蔵庫に収納されている食品などの数量をセンサで常に検知していている
②調理などで食品を使用する
③冷蔵庫が決められた数量を満たさない状態になる
④インターネットに接続されている冷蔵庫が、自ら不足した食品を注文する

 というプロセスにおいて、便利さに目を奪われて、日々の食事が、冷蔵庫の中身に支配されるようなことに気が付くことである。

プレス加工トレンドワード

 改めて、トレンドワードをプレス加工現場で考えてみよう。先ほどの「IoT」という用語に関して、みなさんの中には、「IoTは、生産技術の範疇だから、俺ら生産現場には、関係ないよ」と考えた方がいないだろうか。

 実は、この視点は、残念な傾向である。なぜならば、何度も申し上げるが「IoT」は、あくまで手段なのである。さらに、「手段」を利用する場所は、決められていない。IoTを考えた人々でも、その利用の広がりを感じているが、実際の利用に関しは、ほとんど想像することもできないのが現状である。

 特に、「ものづくり」は、IT技術者にとってわかりにくい分野でもあるからである。この現場レベルでのIoTの広がりを担うのは、みなさんである。生産技術の方々にも、十分な知識や経験があるが、現在、加工されて状況を100%実感している現場技術・技能者と比較すると、明らかに、生産技術の方々が持つ情報量は少ない。そこで、みなさんの「まさしく、現場レベルの発信が、より効果的で、IT技術者が気付かないIoT技術の利用を可能にする」のである。

総力戦が必要、異なる視線で異なる結果

 では、「期待される現場」では、どのような行動をすればよいのだろうか。その際に、特集の用語解説を利用して頂きたい。プレス作業は、目の前の現象に関して、それらに関する「情報」を的確に利用して、「考える」ことが大切なポイントである。このときの「情報」に当たる1つが「トレンドワード」である。つまり、「考える」+「情報」の関係を重ねることでもある。この「情報」をいわゆる一般常識のように理解しているだけでは、みなさんに求められている「新たな考え・発想」には大きなギャップがある。それを埋めるためには「情報」の本質や歴史を十分理解することが必要である。

 具体的には、自動機器の導入でのIoT化では、「その作業を人手で行う際の問題点などを十分理解した上で、IoT化を考える」ことである。

 今日から「考える現場技術・技能者」となり、IoTを使われる立場ではなく、使う立場に進化しよう。その結果は、みなさんが中堅技術者になった段階での「AI利用」に大きな影響を与えることになるでしょう(図1)。

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