[ オピニオン ]
(2015/11/30 05:00)
30日に、フランス・パリで気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)が開幕する。一部の先進国を対象とした京都議定書に代わり、すべての締約国が参加する2020年以降の公平で実効性のある新たな法的枠組みを議論する。
この枠組みに向け、大半の締約国が温室効果ガスの排出削減目標を国連に提出している。京都議定書を批准しなかった米国や最大の二酸化炭素排出国の中国が削減目標を提出したことは、温暖化対策の前進に期待を持たせる。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は第5次評価報告書で、温室効果ガス濃度と気温上昇は比例し地球の平均気温はこの100年で0・85度C上昇、このまま対策を講じないと今世紀末には産業革命以前に比べ4度C前後の上昇が予測されると指摘した。
現時点でも世界的に異常気象が起こっている。この平均気温の上昇を「2度C以内」に収めて極端な気候変動を緩和しようというのがCOP21の新たな枠組みである。だが準備会合でも各国の思惑が入り乱れ、削減目標の義務化はもとより各国の目標を検証する制度の導入も不透明な状態だ。さらに経済協力開発機構などが主要排出国の排出削減目標を達成しても気温は産業革命前比で2度C以上になってしまうと報告している。
人間ドックで医師に「酒やたばこを控えないと大変な病気になるかもしれません」と指導される。病気になれば本人も周りもつらい、お金もかかると分かっているが、人間は弱いもので、なかなか習慣を変えられない。地球もこのまま温室効果ガスを排出し続けていては大変な病気になると、IPCCという医師が警告している。病気にかかってから治療するよりも、予防する方が低コストであることは分かっているが、なかなか切り替えられないのは同じだ。
ここはひとつ、パリを転換点にして「2度C」を死守する方向を打ち出してほしい。難しい目標が設定されれば、それをクリアするためのビジネスが必要となる。産業界にとっては「2度Cの死守」は大きなチャンスでもある。
(2015/11/30 05:00)