[ オピニオン ]
(2016/5/19 05:00)
2016年1―3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0・4%増と低い伸びにとどまり、景気の停滞が明らかになった。うるう年効果を除けば実質ゼロ成長であり、消費増税の先送りや日銀による追加緩和への期待が高まりそうだ。
低成長の原因は円高・株安に加えて、世界経済の不透明感から設備投資が不振だったこと。個人消費は同0・5%増と2四半期ぶりでわずかに増加した。ただ1―3月は、平年の90日間にうるう年の1日が加わっている。この押し上げ効果がなければ、個人消費は単純計算で減少していたことになる。
景気低迷をよそに、企業の16年3月期決算はおおむね好調だった。しかし中身を吟味すると為替差益が海外での売上高を押し上げたほか、訪日外国人の大量購入が非製造業への追い風となった。つまり外的要因による好決算で、実力とは言い難い。営業利益で2兆8500億円の最高益を記録したトヨタ自動車の豊田章男社長は、これを「追い風参考記録」と評した。
今後についても、景気のけん引役が不在の中で、円高・株安や世界経済の不透明感というマイナス要因は継続する。為替は米国の利上げペース鈍化で日米金利差が広がらないため円高基調が続くとみられる。これは株価上昇の重石(おもし)となる。世界経済の先行きも不安視されており、国際通貨基金(IMF)は見通しを下方修正した。
こうした状況が改善されるかどうかは、26日に開幕する主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で金融緩和の継続、財政出動、構造改革の政策協調が図られ、有効な策が打ち出せるかどうかにかかっている。また個人消費の低迷に歯止めをかけることを理由に、安倍晋三首相が消費増税の先送りを決断するのは確実な情勢だ。
日本経済を再生し、景気を浮揚させるには成長戦略が不可欠。新規参入やイノベーションを促す規制緩和や投資促進策が有効に違いない。また企業も逆風にめげず、前向きな投資や挑戦で自らの道を切り開くことが求められる。
(2016/5/19 05:00)