[ オピニオン ]

社説/出光創業家の“乱”−産業界の期待に応えた決着を望む

(2016/7/7 05:00)

出光興産と昭和シェル石油の合併計画が揺らいでいる。出光の大株主である創業家の反対により、会社側は年末にも開く臨時株主総会で合弁案を否決される危険を想定せざるを得なくなった。出光の月岡隆社長は11日に創業家側と直談判し、理解を求める考えだ。元売り会社は石油の安定供給という国の安全保障にかかわる重要な役目を担う。国民や産業界の期待に応えられるような決着を望む。

出光の創業家側は合併反対の理由として、昭シェルとの企業体質や中東における立ち位置の違いを挙げる。出光には大家族主義を重んじた歴史があり、中東ではいわゆる「日章丸事件」以来、イランと親密な関係にあった。一方の昭シェルは英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル傘下の外資系企業で、サウジアラビア国営企業も多く出資している。対極にある両社が合併しても融和は難しいとの主張だ。

しかし両社は、こうした課題を十分に承知の上で合併を決断し、あらゆる苦難を乗り越える覚悟を持っているはずだ。出光の経営陣は、従業員はじめ多くのステークホルダーから将来を託された者としての使命感を余すところなく伝え、腹蔵なく話し合うことが重要だ。

石油製品の国内市場は縮小する一方であり、元売り各社が今のまま共存するのは難しい。新興国などの成長市場を目指す上でも再編は有力な選択肢だ。

さらに出光の月岡社長は、合併で需給調整力や価格形成力を高めることで「透明で公正なマーケットをつくりたい」としている。業界には厳しい競争に直面する系列給油所へのてこ入れを理由に、ガソリンなどの卸販売で不透明な値決めをするケースがある。これが元売りの収益力低下にもつながっているとの指摘を踏まえたものだ。

不透明な取引慣行は、市場が縮む中での過当競争が生んだ弊害の面があり、合併は解消への有効打となり得る。ただ合併はあくまでも手段であって、目的ではない。より良い策がほかにあるのかどうかを、創業家との協議の中で明確にしていく必要があるだろう。

(2016/7/7 05:00)

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