[ オピニオン ]

社説/医師主導の医療機器開発−現場ニーズを発掘し輸入品に対抗を

(2016/7/14 05:00)

最先端の医療機器開発に、現場の意見を取り入れる仕組み作りが本格化している。医療の質の向上には多様なアイデアを持つ現場の医師と、医療機器メーカーとの接点を増やし、緊密に連携して優れた機器を開発することが重要だ。現場に眠るニーズの発掘努力も欠かせない。

こうした動きの背景には医療機器の輸入超過問題がある。1985年に約2000億円だった医療機器の輸入額は、2014年には1兆3685億円に拡大した。輸出額と差し引いた輸入超過額は7962億円にのぼる。国内市場約2兆7000億円のうち輸入分は49・1%を占め、先端機器ほど輸入品に押されているのが実態だ。機器開発に医療現場からのフィードバックが不足していたり、医療機器メーカーに市場やニーズに対する理解が欠けているという指摘がある。

医療機器は、現場の医師のアイデアから生まれるケースが多い。ただ、そうした医師は日常の診療に追われており、機器開発や事業化に携わることは困難だ。医療機関と医療機器メーカー、地域のモノづくり企業とのマッチングは全国で盛んだが、医師のニーズを吸い上げる取り組みが不足していた。

経済産業省関東経済産業局と日本医師会は今年から共催の形で、現場のニーズを発掘するセミナーを全国6カ所で始めた。また日本医師会は15年から、医師主導による医療機器の開発支援に取り組んでいる。1年間で100件のアイデアが寄せられ、審査を通過した89件のうち企業などに橋渡しした件数が14件あった。

アイデアを商品化するのは既存メーカーに限らない。発案した医師の知的財産権を確保した上で協業先を募ったり、医師自らが知的財産権をベースに起業するなどの方策もある。ただどんな場合でも事業可能性評価や研究開発費の確保、医薬品医療機器等法をクリアすることなど、第三者を交えた明確なルールづくりが必要だ。そのためには革新的な製品開発に向けた情熱と、関係者の信頼関係の醸成が不可欠だろう。

(2016/7/14 05:00)

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