[ 政治・経済 ]

進むテロ対策(1)備える企業−日本、官民で立ち向かえ

(2016/9/20 05:00)

  • 17日、ニューヨーク市マンハッタンの爆発現場付近に集まった警官と消防隊(EPA=時事)

危険への意識、海外拠点と共有

7月、バングラデシュ・ダッカで起こったテロでは日本人8人が死傷した。テロとの関連性は確認されていないが、9月17日(現地時間)には米ニューヨーク市で爆発事故が発生。世界各地でテロや事故が起きる危険性が高まり、日本企業は社員の安全確保対策を迫られている。2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、日本でのテロ対策強化も急務だ。日本は政府、企業ともに真剣にテロに立ち向かう時が来た。

【対策を強化】

伊藤忠商事はダッカでのテロを踏まえ、ダッカ事務所で危機対応研修を実施。現地の駐在員や事業会社の社員ら日本人7人が参加した。社員が誘拐されるなど有事の対応について理解を深めた。

同社は自社の情報網だけでなく、契約するセキュリティー会社を通じて最新の治安情勢などを収集。それをアフリカや中東など各地域の人事総務担当者と共有する。さらに本社の担当者が4―5年ごとに現地を訪れ、治安情報を更新。苅谷周治海外安全対策マネージャーは「本社と現地で危機管理の認識レベルを一緒にしておくことが重要」と強調する。

日鉄住金物産もダッカのテロを受けて、危機管理マニュアルの見直しに着手。コンサルティング会社との協議に入った。今のマニュアルは危機発生時の項目が薄く、今後は海外危機対応に特化したマニュアルを策定する予定だ。

【事件を予知】

13年にアルジェリアで社員が武装集団に襲撃された日揮。事件後に「セキュリティ対策室」を格上げして社長直轄の組織とし、人員を数人から10人超に増やした。事後対応が中心だった活動も見直して、現地の協力会社やコンサルタント、顧客などから情報を収集し、事件などのリスクの予知に取り組む。

従来、テロの危険がある国は中東など一部地域が主だったが、昨今は欧米など比較的安全とされていた国にも分散。さらにショッピングセンターやレストランなど不特定多数が集まる場所で巻き込まれるリスクが高まっている。MS&ADインシュアランスグループのインターリスク総研事業リスクマネジメント部CSR・法務グループ長上席コンサルタントの奥村武司氏は「危機管理の対象が広がった」と指摘する。

味の素は02年に危機管理部署として総務・リスク管理部を設立した。「01年9月の米同時多発テロが契機だった」(稲田佳昭総務・リスク管理部部長)。進出国と進出を検討する国の双方で、国レベルでなく、都市レベルで情報を分析し、日々更新する。

同社が進出するのは30カ国。「安全対策が整った特定の店やホテルでしか食事をしない」「誘拐対策として外出する際は見張り用の後方車と一緒に行動する」などの規定も国によってはある。今後は各地域本部に順次、権限を移し、現地状況に応じた対策を徹底する。

【安全意識啓発】

海外28カ国・地域に53製造会社(15年末)を構え、170カ国・地域以上で自動車を販売するトヨタ自動車は各拠点に安全責任担当を置く。また海外赴任前の研修でも安全意識の啓発を進めている。

奥村インターリスク総研上席コンサルタントは日系企業の現状を「商社や電機、完成車メーカーなどは危機管理は策定している。ただ、全体として危機対策マニュアルは未整備な企業が多い」とみる。各社は一刻も早く、危機対策を整備する必要に迫られている。

(2016/9/20 05:00)

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