[ オピニオン ]
(2016/10/3 05:00)
年末に向けて、政府・与党の税制改正の議論が進んでいる。企業課税の最大の焦点は、研究開発税制だ。IoT(モノのインターネット)を活用した第4次産業革命などのイノベーション力を高めるためにも、産業界の希望を実現してほしい。
研究開発税制は租税特別措置法(租特)に基づく減税措置で、定期的に内容を見直す。2016年度末に現行制度が期限を迎えることから、経済産業省などがこの延長・拡充を税制当局に対し要求。経団連はじめ産業界も歩調を合わせている。
要求内容は、第一に「サービス開発」を対象に加えることだ。日本のサービス産業の生産性は製造業に劣後している。研究開発の強化によって付加価値を高めることで、日本経済全体の底上げを図る必要がある。
要求の第二は、試験研究費の増え方が大きいほど控除率が高まる仕組みの導入だ。総花的な減税から、意欲のある企業を後押しする仕組みに変えようとするもので、望ましい改革といえるだろう。
要求の第三は、売上高比10%以上もの試験研究費を使う企業向けの「高水準型」の延長である。この制度の適用を受けるのは医薬などの限られた企業だけであり、政府部内には特定業界の支援策だという批判がある。ただ、そうした業界ほど海外との激しい競争にさらされており、税制面での支援は必須だ。
日本は法人税の税率が高いため、設備投資や研究開発などの租特を設けることでバランスをとってきた。ただ法人税率が段階的に引き下げられる中で、租特を縮小すべきだという意見が一部に台頭している。
とはいえ足元の状況をみる限り、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の成長戦略が十分機能せず、景気は失速の危機にさらされている。打開のためには意欲ある企業の前向きな投資を後押しし、イノベーションを加速することが望ましい。
今回の研究開発税制の拡充は減税規模の拡大ではなく、対象を広げたりメリハリをつけたりする内容だ。財政事情は厳しいが、税制当局の理解を期待する。
(2016/10/3 05:00)