[ オピニオン ]
(2017/1/11 05:00)
環境負荷の小さい液化天然ガス(LNG)を、船舶の燃料として供給するための拠点整備の構想が浮上している。日本への寄港を増やし、港湾の競争力を高めるためにも官民が協力して具体化を進めてほしい。
背景にあるのは、船舶エンジンの国際的な排出ガス規制強化だ。2020年に、燃料油中の硫黄分濃度を現状の3・5%から0・5%に制限する。これに伴い、これまでの重油主体だった船舶燃料が、硫黄分を含まず二酸化炭素(CO2)排出量の少ないLNGに転換することが見込まれている。
とはいえ既存船を改造するのは困難であり、LNG燃料船は新造船として徐々に増えると考えられる。転換が早そうなのは、重油を燃やしたときの黒煙が乗客に嫌われるクルーズ船。また環境対策に力を入れている自動車メーカーの自動車運搬船でも、LNG燃料船を使う動きがある。そうなれば造船業界にとっても新たな市場が生まれる。
国際的な燃料供給拠点のネットワーク作りも始まった。日本やシンガポールなど7カ国の港湾当局は昨年、船舶のLNG燃料転換促進協力のための覚書を交わした。
問題は燃料の需要創出や供給方法だ。供給側が採算に乗り、船舶側が安価に燃料を購入するには、ある程度のユーザー数が必要だ。燃料のコスト低減努力も欠かせない。規格や安全基準を決める必要もあるだろう。
国土交通省が専門家らで設置した検討会は昨年12月、横浜港をモデルに燃料供給拠点を整備する構想を打ち出した。近隣にある石油会社などのLNG基地を利用できるほか、太平洋横断航路のアジア側の発着地という地理的メリットもある。
日本は世界で取引されるLNGのうち、3分の1を輸入するLNGの輸入大国だ。国内に多くの基地があり、LNGの取り扱い経験も豊富。供給拠点の整備で先行すれば、韓国などに奪われたアジアの物流ハブを取り戻す可能性も出てくる。国と地元自治体、事業者が十分に協議して、戦略的に取り組んでもらいたい。
(2017/1/11 05:00)