[ オピニオン ]

社説/17年版ものづくり白書−IoTで現場力と収益性向上を

(2017/6/8 05:00)

製造現場のデータを収集する企業は大幅に増えたものの、具体的な活用は道半ば。日本が誇る強い現場を維持・向上するとともに、新たな価値を創造して収益性を高めるために、IoT(モノのインターネット)の利活用を本格化させたい。

経済産業省などがまとめた2017年版の「ものづくり白書」は、人材不足とIoTを結び付けた。円安や人件費の高騰により、過去1年間で海外生産する企業の約12%が国内に生産を戻し、製造業の国内回帰が進んだ。だが8割の企業が技能職を中心とした人材不足を課題に挙げており、ITやロボットを活用した省力化に取り組むことを促している。

その上で、IoT化の進捗(しんちょく)を分析。工場でデータを収集する企業は16年12月時点で大企業が88%、中小企業で66%に上り、1年前に比べて全体で26%も増えた。ところが、データ収集の次の段階である稼働状況の「見える化」や、取引企業との製造履歴管理など具体的な活用企業は2割に満たないという。

さらにデータ収集の過半が現場主導で行われ、経営戦略の観点から有効活用されておらず、これが日本の製造業の収益性が低い原因の一つだと分析する。要は収集したデータをどう活用するか悩んでいる企業が多いということだろう。

そこで白書は、最終製品、部品・部材、素材、設備の4タイプに分け、どのような利活用があり得るか先進事例を多数提示した。産業用ボイラの異常発生率を9割減らした三浦工業、自動車の開発工数を3割削減したマツダ、生産設備の緊急停止を3割減らしたジェイテクトなど、大手から中小・ベンチャーまでさまざまな企業の取り組みを例示した。中小企業にも分かりやすい仕掛けだといえる。

白書は、単に良いモノを作るだけでは生き残れず、顧客起点で考える「デザイン思考」や、全体最適を考える「システム思考」を取り入れ、新たなビジネスモデルを構築することが必要と指摘する。さまざまな事例を分析し、まずは自社で取り組めることから始めてほしい。

(2017/6/8 05:00)

総合4のニュース一覧

おすすめコンテンツ

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン