[ オピニオン ]
(2018/4/2 05:00)
日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)能力に対する不信感が強まる事態を避けるためにも、統治体制の抜本的な立て直しを急ぐ必要がある。
三菱マテリアルが子会社5社で発覚した品質データ偽装問題の再発防止に向け、グループ全社に対する企業統治の強化策を打ち出した。企業統治にかかわる施策の立案や実行管理を担う組織の新設などが柱だ。
偽装問題の調査報告によると、同社はグループ各社の風土改革や統治の強化が必要なことを認識して対策を講じてきたものの、スピード感に欠ける点があった。竹内章社長は「グループの経営を健全な状態に戻す」決意だが、対応が後手に回った責任は重い。調査報告では、課題の一つとしてグループ内の意思疎通が不十分だった点を指摘している。
子会社のうち自動車用などの焼結部品を製造するダイヤメット(新潟市東区)は、2010年代初頭から海外事業に力を入れる一方で、国内の老朽設備を更新するための投資を先送りしてきた。このため工程能力が落ち、顧客の仕様に合わない不適合品が増えたという。
さらには不適合品の増加に伴う業績悪化を食い止めようと、生産余力を顧みずに受注を増やした結果、生産ラインを止められなくなり、設備の改善が一層遠のくという悪循環に陥った。製品の供給を止めれば顧客に迷惑がかかると考え、検査データを偽ったまま出荷し続けたという。親会社はこのような実態をどこまで把握し、どう対処していたのか。
一方的に統制を強めるだけでは現場が抱える課題の解決、すなわちリスク要因の解消につながらない。現場それぞれの実情に沿った的確な指導・助言と資源配分が不可欠だ。これなくして企業統治は成り立たない。
同様な不正行為があった神戸製鋼所の経営陣も、現場の課題に無頓着だった。いずれも改革を急いで成果を示さなければ、日本製品の品質だけでなく、日本企業の統治能力に対する不信感が、海外の取引先や投資家の間に広がりかねない。
(2018/4/2 05:00)