[ オピニオン ]

社説/人文社会系の男女共同参画 ジェンダー視点で研究の新展開も

(2018/5/15 05:00)

人文社会科学系の研究者の男女共同参画推進ネットワークが動き出した。自然科学系より女性比率が高く、ジェンダー(社会的・文化的に形成された性別)問題もどこか人ごとだった状況から転換する。研究にジェンダーの視点を導入し、新たな学術の開拓につながると期待したい。

これは2017年に日本学術会議から立ち上がった「人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会」(ギース)だ。会員数は数百―数千人と幅があるものの、50超の多様な学会や協会が加盟する。

実は研究者のジェンダー問題は、自然科学系の「男女共同参画学協会連絡会」に歴史がある。各学会の規模が大きく活動余力があり、国の科学技術基本計画も後押ししたのが理由だ。

これに対し、人文社会科学系は女性が多く、問題になりにくかった。ギースは自然科学系の取り組みを参考に、大規模アンケートを近く行う。男女の就業形態やライフ・ワーク・バランスなど、項目をそろえ比べる計画だ。ギースの井野瀬久美恵委員長(甲南大学教授、日本学術会議前副会長)は「学会の多様性を口実に無頓着なケースもある。しかし他の学協会の実態やグッドプラクティスを知ることで、改善に動ける」と強調する。

例えば、会員数約3000人、女性比率33%の日本教育学会のケースだ。同学会は52人の理事の選挙時に、男女比など参考データを会員に送付。その結果、理事の女性比率が08年の8%から、17年の23%に向上した。

一方、学術研究におけるジェンダー視点では、会員約8200人で女性比率45%の日本心理学会が先駆だ。フェミニズム心理学など、専門家以外にも響くテーマが強みだ。

ギース加盟を機に、初めてジェンダーを正面からとらえたシンポジウムを開くのは、日本西洋古典学会だ。テーマは「古代ギリシア・ローマ世界におけるジェンダー・イクオリティー」で、男女共同参画の理念をギリシャ哲学で検討するなどユニークだ。人文社会科学系ならではの好影響を期待したい。

(2018/5/15 05:00)

総合4のニュース一覧

おすすめコンテンツ

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン