[ オピニオン ]

社説/過去最高益の化学各社 国際競争力の有無を再点検すべき

(2018/5/24 05:00)

化学産業は勝って兜の緒を締めよ―。2018年3月期連結決算は過去最高益を更新する好業績が続出した。ただ、主要因は工場の設備トラブルや中国の環境規制強化で供給が絞られた結果の石油化学市況高と原燃料安に支えられた製品のスプレッド(利ザヤ)拡大だ。期中は為替も円安基調と多分に外部環境に助けられて、追い風参考記録との評価も少なくない。今こそ、国内化学各社が事業ポートフォリオをもう一度見直して、浮かれずに技術優位性など国際競争力の有無を再点検すべきだ。

「こういう時代が過ぎ去った時に、何が自分たちに残っていて、今のような高い利益を維持できるのか」。日本化学工業協会の石飛修会長(住友化学会長)は任期満了を間近にした18日の最後の定例会見であえて厳しい言葉を残した。そして「日本の化学産業はまだまだ米ダウ・デュポンや独BASFと比べて劣後している部分がある」と業界に漂いだした油断を戒めた。

“山高ければ谷深し”と言うように市況悪化はいつか必ず来ると考えるべきだ。現在想定しうる大きなリスクは米中貿易摩擦だろう。報復関税合戦に発展すれば、化学品も無傷ではいられない。18年は米シェール由来の安価な汎用樹脂がアジア市場へ本格的に流入する年であり、従来中国が主要な仕向先と見られていた。

行き先変更を余儀なくされた米国産品が日本を含む他のアジア市場へなだれ込み、一気に市況悪化を引き起こす可能性はある。為替の円高がさらに進行すれば、これまで以上に海外産品が流入しやすい環境になる。

競争力は市況変動耐性に等しく、その強みを伸ばすことに集中しなければならない。いかに石化に追い風が吹こうとも、原料コストの安い中東や米国と真正面からぶつかるのは無謀でしかないからだ。

ここ数年は“脱汎用化”を旗印に石化の構造改革と高付加価値路線を歩んでおり、迷うことはない。欧米勢に対する挑戦者の気概を持って、今の道をブレずに進んでほしい。

(2018/5/24 05:00)

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