[ オピニオン ]
(2018/6/4 05:00)
革新的な技術やビジネスモデルを用いて、大きな成長を目指すスタートアップ企業が注目を集めている。愛知県は産学官金が連携するプロジェクトを立ち上げ、スタートアップ企業の創出を地域で戦略的に支援する。“ベンチャー不毛の地”との印象が強い地域で、イノベーション誘発を促す挑戦が始まった。堅実な取り組みで、着実に成果を上げたい。
スタートアップ企業を相次いで生み出す環境はエコシステムと呼ばれる。本来は生態系を意味する用語で、経済分野では企業、人、モノが有機的に結びつき、循環して共存共栄する仕組みなどの意味で使われる。
愛知県のプロジェクト「あいちスタートアップ・エコシステム」は県を中核に地域の大学、金融機関などが連携し、エコシステムの拠点形成を図る取り組み。スタートアップ企業の創生によって優れた人材、技術、資金を呼び込み、次のスタートアップ企業が生まれるという循環を根付かせるのが目標だ。
キックオフ会議には約70人が参加し、関心の高さを示した。意見交換では金融機関の積極的な融資を望むなど、地域ぐるみで理解を求める声が上がった。
自動車産業が地域をけん引してきた愛知県では、人材が製造業に流れやすい空気感は否めないだろう。熟練さを重視する製造業と起業家精神は、そもそも背反するという指摘もある。
しかし、IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)などの技術革新がビジネスや社会のあり方そのものを変え、「100年に一度の大変革」を迫られている。自動運転しかりだ。新たなイノベーションを生み出すためトヨタ自動車だけでなく、デンソー、アイシン精機などもスタートアップ企業への投資に積極的だ。
大手製造業の豊富な資金がスタートアップに向けられるとなれば、起業家候補にとって十分に魅力的だ。愛知県はスタートアップ創出のポテンシャルが高い地域と見ることもできる。
今後、県は起業家の発掘・養成、スタートアップ誘致などの施策を実施する考えだ。
(2018/6/4 05:00)