[ オピニオン ]
(2018/6/26 05:00)
日本の特許出願件数は近年、漸減傾向にあるが、減少幅は縮小しつつあり、2016年の出願数は31万8381件だった。一方、国際特許の出願は若干の増減があるものの増える傾向にあり、16年は過去最高の4万4495件となった。研究開発や企業活動のグローバル化が進み、国外での知財戦略の重要性が増していると考えられる。
このため、海外特許を日本語に、日本の特許を外国語に翻訳することが欠かせなくなっている。膨大な数の特許情報を人手で翻訳することは困難で、日本特許情報機構(Japio)などが機械翻訳をしている。同機構は1970年に経団連などにより設立され、85年に発明協会の特許情報サービス部門を統合して現在の形になった。
現在、日米欧、中国、韓国など主要国の特許情報を日本語と英語で検索できる世界特許情報全文検索サービスを提供している。「特許の情報を日本語で検索できるサービスをしているのはJapioだけ」(松井英生理事長)という。
同機構は翻訳精度を競うWATという国際競技会で英日、日英、中日、韓日の特許4部門で1位に輝いた。このうち3部門はニューラルネットによる翻訳。ニューラルネット活用をさらに加速する目的で、2月に「知財AI研究センター頂」を設置。研究所は特許情報のニューラルネットを用いたディープラーニング(深層学習)による翻訳の取り組みを本格化する。「頂は知財部門のAI研究・開発・活用の頂点を目指すという意気込みを込めた」(同)そうだ。
機械翻訳の問題は元の文章だ。機械が頭を悩まさないように明晰で理解しやすい文章が求められる。同機構は「特許ライティングマニュアル」を発行して人に理解しやすく、機械にも処理しやすい「産業日本語」の普及に取り組んでいる。
特許だけではなく、東京五輪・パラリンピックでも機械翻訳が活躍する場面も出てくるだろう。日本企業の技術を世界に広げるには、まずニューラルネットが戸惑うことがない文章を作ることが必要ではないか。
(2018/6/26 05:00)