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【電子版・連載】出張中に遭遇した小さな事件簿 第11話「15号車で事件発生!困ったもんだ」

(2018/8/5 07:00)

  • さかい三十郎。彼は重工業メーカーで造船・プラント・工作機械事業に携わって40年の経歴を持つ出張多きサラリーマンである。彼はサムソナイト鞄(かばん)とバインデックス手帳を愛用している。ちなみにサムソナイト鞄は時に、新幹線の車内混雑時にはいすに替わる(イラスト:小島サエキチ)

 彼の名は「さかい三十郎」。正義感にあふれた庶民派である。そんな彼が出張時に出会ったノンフィクションのハプニングを「小さな事件簿」としてつづったのが本連載である。

 「本当にそんなことが新幹線内で起こるの?信じられないなぁ…」との思いで読まれる方も多いかもしれないが、すべてノンフィクション(事実)なのである。彼の大好きな「映画の話」もちりばめてあるので、思い浮かべていただければ幸いである。

 それでは車内で遭遇した事件簿の数々をご紹介させていただく。

* *

その1:自走するスーツケース

 日曜日の昼下がり、名古屋港近くの見本市会場での展示会を終え、新幹線で東京へ戻ろうと名古屋駅に向かった。のぞみ号は混雑しており、ひかり号でゆっくりと移動することにした。15号車内は乗客もまばらであり、2人席を占有し、眠りにつこうとしたその時、事件は起こった。

 何かが移動してくる音がする。何だろう?と思いながら通路を眺めていた。売り子のワゴンにしては、おかしい動きの音である。座席の肘掛けに当たりながら移動してくる音がする。

  • (イラスト:小島サエキチ)

 その時、三十郎は見た。

 「何だこれは!透明人間か?」

 そこには海外旅行用のスーツケースが自走していた。1週間用の大型で赤いハードケースである(サムソナイトではない)。だが、持ち主は現れない。

 車掌が車内を通りかかり、不審な顔で三十郎を窺う。自分の持ち物ではないことを伝え、車掌とともに後部座席を見渡した。すると、3人席を利用し、スヤスヤ眠っている若い女性を見つけた。

 「あの子のものだ!」

 三十郎はカバンを席まで運び、かつ移動しないように窓側に置いてあげた。車掌は女性を見ながら、困り果てた表情で退散した。

 《貴方ですよ!気をつけてください。もし、子供にでも当たったら事故のもとですよ。状況を書き留めて、「事件簿」として取り上げることになりますよ。カバンは横にして座席の前に置きましょう。》

事件始末記・筆者の独り言

 車内で困ったものには、次のようなことがある。

 「ペットを入れたケージ」。子犬程度なら良いが、中でゴソゴソ聞こえるものは困る(爬虫類と思われる)

 ちょっと香りは強いが、嬉しい食べ物もある。「横浜しゅうまい、大阪ぎょうざ、柿の葉寿司」など、食欲をそそぐもの。「うなぎ飯」も良い。三十郎の郷里、柳川市辻町東組にある「菊水」は特にうまい(帰省した折に関西支社勤務のK君が大牟田出身であることを思い出した。西鉄柳川駅で待ち合わせ、「菊水」に出向いたが、味は変わっていなかった)

 

その2:降車間近なのに、おつりがこない!

 高校時代の同級生で車内販売会社に就職した男がいる。博多駅管内で頑張っていると聞くが、もう25年は会っていない。

 福岡は三十郎の心の故郷である。昭和53年末、ライオンズが九州を去った(西鉄→太平洋クラブ→クラウンライターへの売却を経て)。三十郎もこの年の1月の職場移動で九州を去り、東京へ向かった。以降は西武ライオンズを応援しているが、心は西鉄ライオンズ命である(特に池永正明投手が好きで、プロ野球OB戦に復帰された試合で見たマウンド姿に涙した)

 さて本編は車内販売を利用し、「手土産を購入した人物と販売員」の一編である。

 沿線のおみやげには良いものがある。東京から下ると、「草加せんべい」、「うなぎパイ」、「ういろう」などが定番である。通常ならば何事もなく、「モノと金が交換」され、売買行為は終了していくが、こんな場面を目撃した。

お客「そのみやげください」

売り子「○○ですね。1,500円でございます」

お客「ごめん、細かい金がない。1万円でお願いします」

売り子「申し訳ありません。おつりがございません。のちほどお持ちいたしますので、少々お待ちください」

 販売員は客の「車両と座席番号」をメモし、立ち去っていった。1時間は過ぎたであろうか、やがて車内アナウンスがされた。

 「豊橋駅を定刻どおり通過しました。間もなく名古屋駅到着です」

 この直後、例のお客が焦り始めていた。モノは入手している模様である。と、いうことは何を焦っているのだろうか?容易に想像がついた。彼は売り子が持参するであろう「おつり」を待っているのだ。

 車両は名古屋駅プラットホームに滑り込んでいた。乗降口が開き、下車が始まった。しかし彼が待つ「おつり」はこない。

 ひかり号は発車した。販売員は慌てた様子で車内を探していた。その後、車掌と連携を取り名古屋駅員と連絡するのが確認された。

事件始末記・筆者の独り言

 今は応対マニュアルが整備され、こんなトラブルはないであろう。「降車駅と車両・座席番号」が確認され、「おつりとモノと1万円」が交換される。

 また、5,000円札と1万円札のトラブルもよく見かける。

 「おつりが少ないじゃないか、私が渡したのは1万円だ!」

 人間の行為に万全はない。皆さん気をつけましょう。

(雑誌「型技術」三十郎・旅日記から電子版向けに編集)

(2018/8/5 07:00)

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