[ オピニオン ]

社説/下請け取引の適正化 初の勧告、国の制度活用につなげよ

(2018/8/23 05:00)

下請け中小企業の悩みを解決するには、より実態に沿った制度の活用が必要だ。

総務省は行政評価・監視制度に基づき、下請け取引の適正化を公正取引委員会と経済産業省、国土交通省に対して勧告した。同制度で下請け取引を調査したのは「平成以降で初。それ以前にも記憶にない」(総務省行政評価局)という。地味な分野に監視の目を向けたことに敬意を表する。

総務省の調査では、いわゆる「下請けいじめ」を経験した企業は35%。ただ66%が「いじめは減ってきている」と回答している。

一方、法で定めた禁止行為をすべて知っている下請け業者は26%。実際に「いじめ」を受けた企業のうち、国の相談窓口を利用した割合は3%に過ぎなかった。また、違反の申告を受けた国の機関が、案件の処理結果を申告者に連絡しないケースもあったという。

このため総務省は、制度や窓口の周知を図ることや、相談や申告を受けた後の運用ルールを見直すことなどを勧告した。同時に経産省・中小企業庁による「下請かけこみ寺」「下請Gメン」の活動強化を求めた。

おおむね納得できる内容だ。ただ実際の下請け取引にはさまざまな外的要因が働くことに注意すべきである。「いじめ」が減っているという調査結果は、最近の建築需要の急増がゼネコンと下請け業者の取引関係にプラスに働いた可能性がある。

逆に、デフレ脱却局面で原料が値上がりし、それを最終消費者に転嫁できなかった分や、発注元企業の“働き方改革”のしわ寄せなどが下請け業者の新たな負担になりつつある。近年では支払い遅延や代金減額などの典型的な禁止行為より、不当な労務提供などに悩む下請け業者が多いという。

多様化する下請け取引を適正化するには、企業に周知を図るだけでなく、行政が現場に近づいて実態を把握することが望ましい。その意味でも「下請Gメン」による企業訪問活動は重要だ。勧告を機に、制度の活用を図ってもらいたい。

(2018/8/23 05:00)

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