[ オピニオン ]
(2018/9/18 05:00)
事業活動で排出する二酸化炭素(CO2)に価格を付ける「カーボンプライシング(CP)」の議論が中央環境審議会(環境相の諮問機関)で始まった。だが、過去の会議と内容は変わらず、委員がメリットとデメリットを主張し合って終わった。そろそろ導入の可否を決める議論をしてほしい。
中環審にCPの活用を話し合う小委員会が設置され、7月末に初会合が開かれた。冒頭、中川雅治環境相は「外国ではCPの課題を乗り越えた事例があり、わが国でも十分に活用できる」とあいさつし、導入に意欲を見せた。
しかし中川環境相の退席後、委員会からは「以前の会議と同じ」との指摘が出た。環境省は2017年度、別の会議でCPを検討した。新設の小委員会で配布された資料は各国の導入状況などが整理されただけで、目新しさはない。17年度の会議にも参加した委員からすると「議論の再現」だった。
CPとは、CO2排出量に応じて課税する「炭素税」、排出の上限を超えた企業が他社の排出枠を購入して超過分を埋め合わせする「排出量取引」が代表的だ。いずれもCO2がコスト負担となるため、企業の排出削減意欲が高まると期待される。
日本は50年に温室効果ガスの排出を80%減らす長期目標を掲げており、環境省は達成手段の一つとしてCPの導入を目指す。一方、産業界はコスト負担になると反対する。しかし最近、企業からも導入を求める声が出ている。市場がCO2排出の少ない機器を求めるようになり、先進的な省エネ機器を販売するメーカーにとって商機となるためだ。
このようにメリット、デメリットは出尽くされている。小委員会の委員の一人は「CPのプラス効果、逆に経済を減速させるマイナス効果を示し、具体的な議論をすべきだ」と訴えた。8月末開催の2回目の小委員会では、CP導入済の海外諸国のCO2削減などの数値もシミュレーションし、導入可否を決定するための踏み込んだ議論を期待したい。
(2018/9/18 05:00)