[ オピニオン ]
(2019/5/22 05:00)
日本の総人口が2011年以降、減少する一方で、65歳以上の高齢者人口は増え続け、18年は前年比44万人増の3557万人となった。仕事を辞めてもまだまだ元気な人は少なくない。現役時代に化学工学会で活躍した元気な高齢者たちが社会貢献と自己発現を目的に結成したシニアケミカルエンジニアズ・ネットワーク(SCE・NeT)が創立20年目を迎えた。
20年前の企業は60歳定年が一般的で、退職後も健康で意欲のある人が豊富な経験や知識を発揮する場が少なかった。これを憂いた綜研化学の社長・会長を務めた中島幹氏らが「退職後も皆で集まって研究し、成果を社会に発信しよう」と呼び掛け、化学工学会の下部組織としてSCE・NeTを立ち上げた。
現在、80歳を超えたメンバーもいるが、SCE・NeTはお年寄りのお茶飲み会ではないようだ。現在は安全、エネルギー、環境、装置材料、福島問題、神奈川の6研究会があり、それぞれの研究会に10人前後が参加して月1回会合を開いている。研究会には参加しないが、SCE・NeT会員として約40人がサポートしている。
各自の研究成果は、当初各研究会で発表していたが、現在はSCE・NeT全体で共有しようということになり、全体会合で発表するようになった。その中で優れた研究成果は化学工学会の年会で発表するなど外部発信の仕組みを設けている。
6研究会の中で一番に成果をあげているのは安全研究会で、メンバーの論文が米国化学工学会(AIChE)ジャーナルに掲載された。同研究会はこの論文を翻訳、自分たちの経験も加えて本を出版した。エネルギー研究会など他の研究会も多数の研究成果を外部発表している。
現在では、機械学会がシニア会を設けるなど、いくつかの学会で高齢者の活躍の場を用意するようになってきた。日本人の平均寿命は男女とも80歳を超えている。人口減少社会の中で学会に限らず意欲のある高齢者を、言葉は悪いが「有効活用」することが重要な時代になったのではないだろうか。
(2019/5/22 05:00)