[ オピニオン ]

産業春秋/お札のすかし技術

(2019/6/4 05:00)

2024年度上期に刷新される1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)。新たな偽造防止対策として、現行のすき入れに加え、高精細すき入れ模様を導入する。新紙幣の製造に取り組む国立印刷局によると、お札を光にかざすと肖像などが現れる「白黒すかし」という技法を独自に磨きあげ、高精細化を図るという。

近代以降、紙幣にすき入れが使われたのは、1882年発行の改造紙幣(神功皇后札)五円券から。トンボと桜花の図柄が「白すかし」で入った。

円形の空白に肖像すかしが入った紙幣は、明治末期の1910年に発行された日本銀行兌換券乙5円が最初で、肖像は大黒天。当時国民から「空白部分があり印刷漏れではないのか」とのクレームが相次いだという。

その後は関東大震災、金融恐慌、第2次世界大戦と非常事態が続いたこともあり、肖像すかしが途絶えた。復活したのは、半世紀後の57年、聖徳太子が描かれた五千円札だった。

紙幣は江戸時代からもあったものの、技術が稚拙だったため、偽造が容易だった。日本の近代化で西洋からの印刷技術導入が進むとともに、職人の手彫りによる原版彫刻のやり方も進化を遂げた。新札を手にする際は、すかしをじっくり見たい。

(2019/6/4 05:00)

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