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社説/19年版通商白書 国際貿易で日本の役割が不透明

(2019/7/17 05:00)

経済産業省がまとめた2019年版通商白書は、自由貿易体制に迫る危機をまとめている。米中貿易戦争の終わりが見えない一方で、世界経済の成長を支えてきた自由貿易体制が大きく揺らぐ。こうした中、新たな国際通商システム構築の必要性をうたった。ただ、日本が果たすべき役割は見えてこない。

同白書は、足下(あしもと)で高まってきた保護主義について、世界恐慌後のブロック経済期(1930年前後)や、日米貿易摩擦期(80年前後)と並んで、20世紀以降で3回目の保護主義の大きなピークと指摘する。ただ、ブロック経済期後にはGATT(関税及び貿易に関する一般協定)が設立され、日米貿易摩擦後には世界貿易機関(WTO)が設立され、多角的貿易体制が構築された。これにより、保護主義を抑えて、自由貿易を進めてきた。

さらに、2008年秋のリーマン・ショック以降の世界金融危機時にも、WTOによる貿易制限的措置のモニタリング強化や、主要20カ国・地域(G20)による国際協調など、多角的貿易体制が保護主義の抑止に大きな役割を果たしてきた。

しかし、足下では、WTOが公表している「G20諸国の貿易及び投資措置に関する報告書(第20版)」によると、月平均の貿易制限措置は16年以降年々上昇傾向にある。輸入制限措置の対象となる貿易額試算は18年5―10月期が約4810億ドルと、17年10月―18年5月期(約740億ドル)の約6倍に達した。

また、国内格差の拡大などから、自由貿易への懐疑も先進国の一部で出始めている。同白書は、こうした見方に対し、近年の技術革新が定型業務に占める割合が多い中技能労働者の技術代替となり、格差拡大につながったと分析している。

同白書は、日本企業の海外展開の方向性について、拡大余地があると提言している。海外現地法人を業種別に見ると、製造業・卸売業が過半数を占め、小売り・サービス業のシェアは小さい。特にアジアでは、他地域と比べシェアが依然として低く、今後拡大余地があるとした。

(2019/7/17 05:00)

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