[ オピニオン ]
(2019/7/18 05:00)
厚生労働省が地域別最低賃金の引き上げ額目安を示す中央最低賃金審議会(最賃審、厚労相の諮問機関)での議論をスタートさせた。ここ3年と同率の3%を目安とするかが焦点だ。政府は最賃引き上げとセットで雇用者の7割を占める中小企業への支援策を打ち出すべきだ。
各都道府県の最低賃金は毎年、政府と労使で構成する最賃審から7月末に示される引き上げ額目安を参考に8月中に地域別最賃審議会が金額を決定。その年の10月から効力が発生する。地域別最賃最高額の時給985円の東京が初の1000円台に乗るのかが注目される。
ただ全国加重平均での最賃は2018年度に874円にまで上がっているものの、「率」での引き上げ目標のため地域間の最高の東京と最低の鹿児島の761円との差は224円と前年の221円から拡大している。
最賃引き上げは21日投開票の参院選の争点にもなっている。自民党が公約で地域間格差に配慮しつつ全国加重平均1000円を目指すとし、公明党は20年代前半に1000円超を目指すと達成時期を明記した。一方、立憲民主党は5年以内に1300円に引き上げることを公約に盛り込み、共産、社民両党は全国一律で時給1000円への引き上げを主張する。
ドイツやフランスなど欧州諸国の最賃は、1100円を超えている上、全国一律制度のため地域間格差はない。全国一律最賃への転換は自民党内でも議論しているものの、地方の中小企業を会員に抱える日本商工会議所は反発している。
大企業と中小企業との業績格差も急激に拡大している。その要因の一つが、大企業が受ける円安での輸出価格の上昇利益が中小に回ってないことだ。一方で、中小企業の大企業への納品価格は切り下げられた。
「川上インフレ・川下デフレ」のダブルパンチを受ける中小は法人税を納められず、法人税率引き下げの恩恵も受けられない。最賃を上げ、消費不況から脱するためにも、真っ先に大手と中小の二重構造解消に取り組むべきである。
(2019/7/18 05:00)