社説/関電の企業統治不全 原発事業こそ透明性が必要だ

(2019/10/4 05:00)

「返すことで機嫌を損ねれば原発稼働のリスクになると思った」―。関西電力の岩根茂樹社長は、福井県高浜町の元助役(故人)から金品を受け取りながら、返却しなかった理由をこう述べた。原子力発電のためなら、コンプライアンス(法令順守)に触れることにも目をつぶると言わんばかりに聞こえる。

原子力発電という極めて公共性の高い電源の立地や稼働こそ高い透明性が求められる。関電が引き起こした問題の影響は深刻だが、すべての膿(うみ)を出し切り、原発事業を誰が見ても透明性のあるものに再構築するきっかけとしたい。

関電が公表した調査委員会の報告書は、さまざまな疑問を抱かせる不十分なものだった。なぜ役員や社員が高額な金品を受け取りながら会社ではなく個人で保管してしまったのか。元助役が顧問を務めていた建設会社への関電からの工事発注額は妥当だったのか。そもそも元助役の機嫌を損ねると本当に原発稼働はできなかったのか。すべての疑問は解消されないままだ。

報告書では元助役の異常なふるまいがこれでもかと書かれている。実際に対応した社員のなかには本当に恐怖を覚えた者もいるだろう。しかし、大企業であればこうしたさまざまな威光を借りてふるまう人物への対処法は備えているはずだ。岩根社長は「この人との関係だけは会社のガバナンス(企業統治)の中に入っていなかった」と言うが、そこまで異例の対応をせざるを得なかった本当の理由が解明されなければ、原発事業の透明性確保は果たせない。

関電は今後、独立した第三者による調査委員会を立ち上げる。新たな委員会はこれらの疑問を解消できるよう徹底した調査をしてもらいたい。今回公表した報告書は過去7年間で調査対象者も26人のみだった。新たな調査は期間や対象者も拡大して行うべきだ。経営陣は調査に真摯(しんし)に対応し、どんな不都合な内容でも明らかにする覚悟を持ってほしい。すべての背景を白日の下にさらして検証し、再発防止策を作り上げることで原発事業の再スタートが切れる。

(2019/10/4 05:00)

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