産業春秋/企業統治の難しさ

(2019/12/6 05:00)

上場企業に社外取締役設置を義務付ける改正会社法が、臨時国会で成立した。2021年中に施行の予定。

政府はコーポレート・ガバナンス・コードなど、さまざまな手法で企業に透明性確保と統治強化を求めている。今回の法改正もそのひとつ。ただ一連の改革に対し、大原大学院大学教授の八田進二さんは「監督と監査が混乱してしまった」と批判する。

例えば15年改正で導入した『監査等委員会設置会社』。執行役を監督する取締役の中に監査等委員を設ける制度で、上場企業に急速に広まっている。しかし従来の監査役との違いを説明できる人は少ない。

会計と監査を専門とする八田さんは、実務経験を踏まえつつ「企業の内部統制を有効にするのはトップの意思ひとつ。過去の不祥事発覚は内部通報がほとんどだ」と話す。社外役員設置は決定打にならないという意味にも聞こえる。

日本取締役協会会長でオリックスシニア・チェアマンの宮内義彦さんは、指名委員会を社外役員に委ねることに「経営者が最終決定権を持たないのは怖い」と打ち明ける。経営者のホンネだろう。制度論で企業統治を機能させるのは難しい。法改正は過渡的なもので、今後も試行錯誤が続くことを予感する。

(2019/12/6 05:00)

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