社説/キャッシュレス還元 継続活用へリスクと利便判断を 

(2020/2/3 05:00)

政府が2019年10月に「キャッシュレス・ポイント還元事業」を始めてから約4カ月。消費増税に伴う経済対策の観点では一定の評価がされており、加盟店登録数や還元額も増加傾向にある。同事業の終了後に店舗がキャッシュレス決済を継続するインセンティブをどう創出するかが課題だ。

経済産業省によると、20年1月21日時点で同事業の加盟店登録数は19年10月1日時点比でほぼ2倍の約98万店となった。開始から12月9日までの還元額は約1050億円で、フランチャイズチェーンを除く個店が84%を占める。キャッシュレス普及の進展が感じられる。また、家計消費における駆け込み需要と反動減の規模は、前回の消費増税時の半分程度という見解もエコノミストから出ており、需要平準化に一役買ったようだ。

キャッシュレス決済を導入した中小小売店には、現金を管理する負担軽減効果が期待された。さらに仕事の流れを変え、人手不足をはじめとする問題に対処して業務効率の向上に結び付けることが理想だ。顧客の購買行動などのデータ分析もしやすくなる。データ活用サービスを提供する事業者と組み、市場調査を強化することも選択肢だろう。

一方で、キャッシュレス利用の安全対策には注意が必要だ。日本クレジット協会の調査では、19年7―9月におけるクレジットカードの不正利用被害額は前年同期比34・1%増の68億円だった。電子商取引の浸透に伴うカード決済の増加が背景にあるが、10月以降はポイント還元事業で利用者のすそ野が一段と拡大し、その分、リスクが増している恐れは否定できない。

キャッシュレス・ポイント還元事業は6月末で終了する。中小小売店にとっては、それまで低く抑えられていた決済サービスの手数料が引き上がるリスクも考慮する必要がある。

日本は海外から、キャッシュレス決済の普及の遅れを指摘されることが多い。中小小売店も決済事業者も中長期的視点に立って、普及への方策を探ってもらいたい。

(2020/2/3 05:00)

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