産業春秋／78歳大統領の手腕

「米国史上、今ほど試練に直面した時はない。新型コロナ、人種差別、経済、気候変動を克服するため、今こそ団結が求められている」「私は全国民の大統領になる」―。７８歳という史上最高齢の大統領が語る言葉は、熱狂ではなく、静かに心に入り込むものだった。

第４６代米国大統領にジョー・バイデン氏が就任した。コロナ禍やテロへの警戒から式典への参加者は少数に絞られ、一般市民の参加は認められず、２万人を超す軍隊の警護のもとという異例の就任式。

まずはコロナ対策が新大統領の最重要課題。就任式でも参加者はみなマスクを着用し、トランプ前大統領時代との違いを示した。次いでトランプ氏の負の遺産である国内の分断をいかに修復するかの難問が待ち受ける。米国第一主義から国際協調路線への転換も日本をはじめ各国が望むところだ。

２００９年からの８年間オバマ政権の副大統領を務め、リーマン・ショック後の不況打開へ、インフラ支出削減を監督するなど、着実に政策運営する実務家だ。

副大統領や閣僚に多くの女性を起用、多様性を重視した。国内の分断を解決するのは至難の業だが、それを乗り越え世界から尊敬される米国を取り戻してほしい。