産業春秋／ネット駆使の宣伝

「法人成りすることになりました」と報告を受けて、そのスピードに驚いた。旧知の女性が個人事業として営むエステティック・サロンが法人化した。新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言中でも２カ月先まで予約でいっぱい。

子どもを保育所に預け、小さなレンタルスペースを借りひとりで開業したのが３年半前。今は都心のマンションに住まいを移し、近くに店を開いて数人のスタッフを抱える。先月も飲食から転職した若い女性が加わった。「こんな時代なので、いい人が雇えます」と笑う。

急成長の原動力は、ネットを駆使した宣伝だ。動画配信や会員制交流サイト（ＳＮＳ）の人気配信者に体験施術を配信してもらう。配信者にとっても“ネタ”になるようサービスを工夫する。コストゼロで、時には数百万件も視聴される。

「配信者は互いを意識していて、誰かがバズる（一気に話題になる）と別の取材が来る」とか。コロナ対策で施術間隔を空けているので、予約の機会損失が起きている現状が恨めしい。

零細な事業者の特殊な事例かも知れない。だが時代に合った経営者の創意工夫が企業を育て、新たな雇用を生んでいることには、やはり学ぶべきものがある。