社説/水素社会実現の条件 官民で低コスト化の方策を探れ

(2021/4/5 05:00)

2050年のカーボンニュートラル実現に、水素の大量導入が必要であるのは論をまたない。しかし、実現にはコストの壁が待ち受ける。官民一体となり、水素で世界をリードする体制を早期に作り上げたい。

政府は水素導入量目標を、30年に現状比300倍の300万トンに設定した。コストは1ノルマル立方メートルあたり30円。現状の水素販売価格は同100円程度。大幅な低減が必要だ。

トヨタ自動車と岩谷産業などが共同代表を務め約200社・団体で構成する「水素バリューチェーン推進協議会」は、水素社会実現への提言をまとめた。

提言では、水素の需要拡大と供給コスト削減、両面の必要性を指摘。「当面は生産段階でCO2排出量が多い水素も支援対象とすべき」と訴えた。さらに水素を燃料に発電した電力を「カーボンフリー電力と明確に位置付ける」ことを求めた。

電力、産業、運輸での需要拡大が重要だ。CO2排出量の多い電力や鉄鋼で、水素を発電の燃料に使用し、製造プロセスで水素を活用すれば、その効果は大きい。運輸では燃料電池車(FCV)普及と水素ステーション整備の加速が必要になる。

安価な水素の調達は、電気代や原料などインフラコストの安い海外で水素を製造し、輸入するのが有力な選択肢となる。

豪州の褐炭(低品位の石炭)から水素を製造し液化した水素を専用運搬船で日本へ輸送する、国際的な水素サプライチェーン実証実験が9月にも始まる。水素はCO2の回収・貯留(CCS)技術でCO2フリーにする。川崎重工業やJパワー、岩谷産業などが参画、輸送コストや安全性などを検証する。取り組みの行方に注目したい。

エネルギー安全保障面では、国内で一定の水素を製造するのも重要だ。再生可能エネルギーを活用したCO2フリーの水素製造も福島県で実証が進むが、課題のコストダウンで技術革新が求められる。民間企業の努力が大前提だが、国も技術開発支援や導入しやすい環境を整える規制緩和など、思い切った措置を断行してもらいたい。

(2021/4/5 05:00)

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