社説/経団連・中西会長退任 財界あげて変革路線を踏襲せよ

(2021/5/11 05:00)

新型コロナウイルス感染拡大の非常時こそ、イノベーション(変革)を推進すべきだ。

経団連は10日、中西宏明会長(日立製作所会長)が退任し、後継に元副会長である十倉雅和住友化学会長の就任を内定した。6月1日に正式就任する。

中西会長の退任は、コロナ禍の出口が見えず混迷の続く日本経済にとって大きなショックである。リンパ腫の病苦を押し、産業界のリーダーとしての激務にあたったことには頭が下がる。労働慣行の見直しやエネルギー政策への大胆な意見など、数々の革新的な発信は傾聴に値した。道半ばで身を引くことは本人が一番、辛いだろう。

十倉氏を後継指名した背景には、中西会長の思いが強く反映されたという。急きょの当番に迷いもあるだろうが、路線を踏襲し変革を推し進めるリーダーの役割を期待したい。

十倉氏は10日の会見で「中西会長時代に提言した、『サスティナブルな資本主義の確立』に一番共感した。産業界はもちろん、社会全体を考えて行動する経団連でありたい」と述べた。

コロナ禍で社会不安や経済格差が拡大し、国民の政府や経済界を見る目は厳しい。日本にも分断の萌芽(ほうが)が大きくなる中で、経団連が経済的利益より、社会全体の利益を優先する姿勢は時宜を得たものである。

ただ、実行には多くの困難が待ち受ける。政府が進めるグリーン成長戦略は、産業界にとって短期的にはコスト増につながる面もある。真の成長にはイノベーションが不可欠である。コロナ禍で拡大した巨額の財政支出を踏まえ、法人税や炭素税などの増税議論も不可避だ。

社会全体の利益と企業の事業継続のベクトルを合わせるには、政治との率直な意見交換や会員企業間の利害調整も必要で一筋縄ではいかない。

コロナ禍の日本経済は、雇用維持や休業補償など、守勢の議論ばかりが聞かれる。しかし本来、産業界が取り組むべきは新たな働き方や生産性の向上で日本の国際競争力を高めることである。十倉新会長にも変革の実行を求めたい。

(2021/5/11 05:00)

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