社説/途上国へのワクチン支援 公平接種が経済再生の切り札だ

(2021/12/3 05:00)

先進国だけがワクチン接種を急ぎ、アフリカなど途上国は取り残される構図がある限り、新型コロナウイルスとの戦いは終わらない。国際社会が全世界の公平供給で協調するべきではないか。

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」に世界が警戒を強めている。デルタ株をしのぐ感染力ともされ、ワクチン効果を弱める懸念もある。ワクチン接種が遅れているアフリカでウイルスが変異し、ウイルスの温床となったとの指摘も根強い。すでに世界各地で感染者が検出され、日本も1日までに2人の感染が確認された。

世界保健機関(WHO)はオミクロン株を警戒度が最も高い分類の「懸念される変異株(VOC)」に指定した。オミクロン株の性質は不明な部分は多いが、人間の細胞に結合するウイルス表面の突起部分には30カ所もの変異が発見されている。

厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」の座長である国立感染症研究所の脇田隆字所長は「南アフリカの一部では感染力が強いデルタ株を凌駕して、オミクロン株に置き換わっている。感染力が増している可能性もある」と指摘する。

WHOは、ワクチン接種が進まないアフリカで感染が広がり、新たな変異株の出現につながるリスクを再三指摘してきた。

先進国が自国民の命を守るために3回目の接種に踏み切るのは理解できる。ただ、接種が低迷する国があり続ける限り、衝撃度の大きい変異株の出現は終わらないだろう。

途上国には低温保存設備が不足する地域も多い。常温保存できるワクチンを途上国に優先して融通するといった対応を考えるべきだ。また、地域によってはワクチンへの偏見から接種が進まない事例もある。科学的根拠に基づいた説明にも力を入れる必要がある。

先進国はワクチン共同購入と分配の国際枠組みである「コバックスファシリティ」への資金拠出を拡充させるなど、途上国支援をさらに強化すべきだ。ワクチンの世界協調こそ、経済再生の最大の切り札である。

(2021/12/3 05:00)

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