社説/原油高騰に懸念 中小対策など3つの施策を

(2022/2/21 05:00)

 原油高騰が日本経済の回復力をさらに弱めかねない。政府には大きく三つの施策を求めたい。中小企業対策の推進、ガソリンなどの価格抑制に向けた追加対策の機動的な執行、オミクロン株の特性を勘案した行動制約の早期緩和である。

 経済産業省は原油価格が高騰し始めた2021年11月に中小企業対策を講じている。この対策をさらに訴求したい。

 各都道府県に特別相談窓口を設置したほか、日本政策金融公庫などによるセーフティネット貸付の運用も緩和している。この貸付は、売上高の減少といった数値要件を満たさなくても、原油高で資金繰りに支障をきたしている、またはきたす恐れのある事業者を支援する。

 経産省は原油高分を適正に価格転嫁できるよう約1400団体に要請もしており、これら施策の確実な浸透で中小企業の資金繰りを支える必要がある。

 他方、政府はガソリンなどの価格そのものの抑制策を講じているが、石油元売り会社への補助金給付だけでは不十分だとの指摘がある。野党は、原油高に伴ってガソリン税を下げるトリガー条項の凍結解除を求めている。だが、同条項は旧民主党政権が東日本大震災の復興財源を確保する目的で凍結したもので、自民党内には当時から凍結でなく廃止を求める声があった。凍結解除はコロナ禍財源が目減りする懸念があるだけに安易な発動は慎むべきだろう。

 政府は自民党の緊急要望を受け、石油元売り会社への補助金を拡大する検討に入る。トリガー条項並みの効果を引き出したい意向だが、財源と効果の検証を十分に重ねてもらいたい。

 中小企業対策やガソリン価格の上昇抑制策は、原油高騰への激変緩和措置との位置づけだ。本質的には、3回目のワクチン接種の推進など徹底した感染対策を前提に、企業の行動制約を早期に緩和することが日本経済の浮上に直結する。

 オミクロン株は感染力が強いものの重症化リスクが他の変異株より低いとされる。この特性を勘案した施策は原油高騰への対応力も高めることになる。

(2022/2/21 05:00)

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