社説/ウクライナ危機の教訓 再エネの主力電源化を加速せよ

(2022/4/14 05:00)

ロシアのウクライナ侵攻は自由と民主主義に対する許しがたい挑戦であるとともに、エネルギーの安定供給を脅かすものだ。日本はウクライナ危機を教訓に、エネルギーの自給率向上と脱炭素化に向け、再生可能エネルギーの導入を加速したい。 

ロシア軍によるウクライナ民間人への残虐行為が次々と明らかになる中で、先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)は経済制裁のレベルを引き上げた。だがロシアへの依存度が高い原油や天然ガスは、すぐに禁輸措置の対象にはできず、制裁は「抜け道」を残した状態にある。

ロシアは世界最大級の原油と天然ガスの輸出国であるためエネルギー需給に与える影響は甚大だ。再エネの拡大や安定供給、コスト低減には時間がかかることから、当面は「産みの苦しみ」として原油・天然ガス価格の高止まりに耐えることを覚悟しなければならない。

プーチン大統領は再エネ依存が進むEUに対し「エネルギーの安定供給に支障をきたす」と危機感をにじませる。核保有と資源ナショナリズムを後ろ盾に侵略戦争も辞さないロシアを抑え込むには、先進各国が連携してエネルギー自給率を高め、ロシア依存から脱していくしかない。日本も一翼を担うべきだ。

原油・天然ガスの高騰は急激な脱炭素化による化石燃料への投資抑制に原因があるとする論調は残念でならない。再エネ中心の脱炭素化をけん制し、投資を慎重にすべきというのは場当たり的と言わざるを得ない。

残り時間は限られる。国連の気候変動に関する政府間パネルは5日公表した報告書で産業革命前からの気温上昇を1・5度Cに抑えるには「2025年までに温室効果ガスの排出を減少に転じさせる必要がある」と指摘。化石燃料ゆえに生じる温暖化や価格変動、供給不安定のリスクを注視する時ではないか。

石油備蓄の放出もガソリン補助金もエネルギーの自給率向上にはつながらない。再エネの主力電源化を蓄電などの技術革新とともにぶれずに促進することこそ、日本の平和と人類の幸福にかなう道だろう。

(2022/4/14 05:00)

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