社説/世界経済減速(下)緊急対策の次は中長期対策を

(2022/4/22 05:00)

 政府は原油など物価高騰に対応した総合緊急対策を月内にまとめる。石油元売り会社への補助金拡充や実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の期限延長などを盛り込む方針で、インフレの影響緩和や体力で劣る中小企業の資金繰りを支援する。機動的な執行により、日本経済を下支える効果を期待したい。

 ただ、今回の対策は足元のリスク回避を狙った「緊急」で「一時的」な対策だ。ロシアによるウクライナ侵略が長期化すれば新たな対応を迫られる。

 ロシアを除く産油国も高値を維持したいのが本音で、再生可能エネルギーなどへの移行期は原油価格が高原状態で推移する可能性もある。脱炭素・脱ロシアに向けた電源構成の再考と調達先の多様化、中小企業のデジタル化など、「中長期」の対策も講じる必要がある。

 今回の総合緊急対策は、既存の対策を拡充・延長したものが目立つ。原油高騰対策では、4月末が期限である石油元売り会社への補助金支給を延長し、1リットル最大25円の支給額も増額。またガソリン小売価格の許容水準も1リットル172円程度から同168円程度に引き下げる。一段の価格抑制が期待される。

 中小企業支援では、6月末が期限である政府系金融機関によるゼロゼロ融資を延長するほか、「セーフティネット(経営環境変化対応資金)貸付」の利下げなどを通じて資金繰りを支えることを検討する。過剰債務に陥らないよう目配りしつつ、経営を後押ししたい。

 ロシアによるウクライナ侵略の長期化が懸念される。経済制裁がロシア産石炭から原油・天然ガスの完全禁輸に至るほど戦況が悪化すれば、燃料価格の一段の高騰は避けられない。日本は石油元売り会社への補助金給付が半ば常態化し、財政負担が膨張し続けることになる。

 今回の総合緊急対策は、緊急事態回避が目的で、課題の本質を解決するものではない。脱炭素への構造転換、経済安全保障の確立、中小を含む企業の円安耐性の強化など産業界は転換期を迎えている。中長期の課題に官民で最適解を模索したい。

(2022/4/22 05:00)

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