社説/日中国交正常化50年(4)習氏「中国の夢」を悪夢にするな

(2022/9/29 05:00)

「中国の夢」。習近平国家主席が2012年の就任から掲げるスローガンで、「中華民族の偉大なる復興」を“夢”として追求する。だが高度成長を続けた中国経済は安定成長に移行したほか、人口減少や米中対立の長期化、欧米の中国依存緩和など、夢への歩みが転機を迎えつつある。孤立回避の後ろ盾だったロシアとの関係も不透明感が漂う。中国は米中と関係の深い日本を無視できず、日中は次の50年で互恵への道を模索する余地が残っている。追求したい。

2ケタ成長を続けた中国経済も11年以降は1ケタ台の安定成長に移った。足元の経済環境は厳しく、世界銀行は中国の22年の実質成長率が2・8%まで落ち込むと予測する。ゼロコロナ政策による行動制限が生産と消費を直撃し、不動産バブルの後始末の課題も残る。7月の若者(16―24歳)の失業率は19・9%と深刻で、中長期的にも楽観できない経済環境が継続する。

一つは人口減。国連によると中国の人口は23年に減少に転じインドに抜かれ世界2位になる。2100年には14億人台の人口が7億人台に半減するとの試算も。一人っ子政策のツケが回り、労働人口が大きく減る。

二つ目の課題は不動産市場の長期停滞。大型のインフラ整備の減少や不良債権処理を背景に市場は縮小傾向をたどるとみられる。三つ目は米中対立の長期化で、中国はロシアとの今後の関係が大きな課題となろう。

「中華民族の偉大なる復興」を掲げる「中国の夢」は、武力行使も辞さない台湾統一、中華民族に属さない新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧など痛ましい副作用も招いた。力による現状変更や人権問題を国際世論は断じて許さず、孤立化が一層早まると中国は自覚するべきだ。

日中国交正常化から29日で50年。米下院議長が台湾訪問後、中国は日中外相会談を中止した一方で政府高官の会談を開催し外交の扉を閉ざさなかった。19年12月以降行われていない対面での首脳会談を実現し、「中国の夢」を悪夢としないよう両国は意思疎通を深めていきたい。(この項おわり)

(2022/9/29 05:00)

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