産業春秋／「地場産」小水力発電

　来春、長野県須坂市で『塩野小水力発電研究所』が稼働する。地元の中小企業が得意技を結集した「地場産」の発電所だ。

金型メーカーの新井製作所（須坂市）が研究開発を兼ねて運営する。須坂市や長野市で金属加工に携わる中小企業の協力を得て、心臓部の水車も含め開発した。最大出力は３０キロワットとマイクロ水力発電に属し、売電や設備販売を見込む。

小水力発電は地域の中小企業に優位性がある。河川ごとのカスタマイズや定期点検、急なトラブル対応を必要とするためだ。ただ水車は欧州などの海外製が実績や豊富な機種構成、低価格を強みに国内市場の約８割を占める。

日本製にも勝機はある。海外製は世界的な需要の高まりや円安の影響で価格面の優位性が薄れつつある。コロナ禍では故障時にエンジニアを派遣できず、水車が停止したままになり、設備を日本製に切り替える動きも。

新井製作所は金型の１品受注生産で培った手法を生かし、海外製より低価格と短納期を可能にした。山国の日本は未開発地点を多く残しているが、小水力発電への参入を促すには規制緩和がもっと必要だろう。資金が域内にとどまる地場産小水力で地方の中小製造業を活気づけたい。