社説/日銀、金融緩和を修正 新総裁への環境整備かを注視

(2022/12/21 05:00)

日銀は20日に開いた金融政策決定会合で、大規模金融緩和の修正を決めた。長期金利(10年物国債利回り)の許容変動幅の上限を現在の0・25%程度から0・5%程度に引き上げ、金利上昇の余地を拡大した。日銀が大量購入した10年物国債利回りは他の年限より低下幅が大きく、10年物の購入ペースを緩和して市場の歪みを是正する狙いとみられる。ただ、黒田東彦総裁は否定するものの、金融市場では実質的な利上げと受け止める。2023年4月の総裁任期を見据え、出口戦略を模索し始めたのかを注視したい。

日銀の黒田総裁は13年の就任以来、デフレ脱却に向けた金融緩和を継続し、16年に10年物国債利回りを制御するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を導入。日銀が指定した利回りで原則無制限に国債を買い入れる指し値オペも同年導入し、許容できる長期金利の上限を0・25%に設定していた。だが米国による相次ぐ大幅利上げにより日本の長期金利も上昇。10年物は0・25%近辺で推移し、日銀は国債の大量購入で金利上昇を抑えてきた。その結果、国債市場の流動性が低下したほか、国債の中でも10年物利回りが著しく低下するなど市場の歪みも指摘されていた。

黒田総裁は今回の政策の修正は、利上げでも出口戦略の一歩でもないと指摘する。だが主要国の中でマイナス金利政策を継続しているのは日本だけで、米欧はインフレ退治の金融引き締めに動き、日本との金利差が円安の副作用を招いた。日銀は金利上昇抑制への国債購入に奔走し、国債発行残高の過半を日銀が保有する異常事態にある。財政規律を乱す財政ファイナンスとも指摘され続けてきた。

今回の政策修正は、企業や家計に多大な影響力が及ばさない範囲で実施した修正との指摘もあり、インフレを助長する円安進行をけん制する効果の方に期待したい。また国際通貨基金(IMF)によると23年は先進7カ国(G7)の中で日本の成長率が最も高い。次期日銀総裁に出口戦略を託すための地ならしなのか、見極めていきたい。

(2022/12/21 05:00)

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