社説/日米欧の金融政策(上)日銀を構造改革で後押ししたい

(2023/5/1 05:00)

日銀の植田和男総裁は4月27、28の両日、就任後初の金融政策決定会合に臨んだ。大規模金融緩和の継続を決めた一方、過去25年間で十分な成果を上げてこなかった金融緩和策を検証することを決定した。現状の水準以下で推移すると見通した長短金利の先行き指針も修正し、金融引き締めを含む機動的な政策を打ち出しやすくした。拙速な金融政策の正常化には慎重姿勢を崩さないものの、正常化への布石を打ったと評価したい。

他方、懸案であるデフレ脱却は金融政策の“1本足打法”では実現しないことにも留意したい。アベノミクスの金融緩和以外の施策である財政出動と構造改革は機能してきたのか、併せて検証する必要があろう。

今回の決定会合では、2023年度の物価上昇率が1・8%、24年度が2・0%、25年度が1・6%とする見通しも示した。ウクライナ情勢や米欧の金融不安など世界経済の先行きが不透明な中、2%の物価目標は継続できないとみている。拙速な金融引き締めは経済成長を鈍化させかねず、大規模金融緩和の継続は適切な判断と言える。

植田総裁は過去25年間の金融緩和策を1年から1年半程度をかけて検証する。ただ検証期間中であっても、必要な政策変更は行う意向を示す。加えて金融政策の先行きを示す指針を修正し、長短金利が現状維持ないし低下していくとしていた見通しを削除した。金融緩和の枠組みを維持しつつ、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)を修正しやすくなったのではないか。日銀による大量の国債購入で金利を抑えるYCCは市場機能を歪める副作用を招いてきた。経済情勢に配慮しながら是正時期を探りたい。

デフレから脱却するには金融政策だけでは不十分だ。アベノミクスの“3本の矢”のうち、構造改革ではイノベーションをこれまで以上に促し、財政出動は規律を重視してメリハリを利かせる必要がある。産業界は人的投資を推進し、継続的な賃上げを実現することで、植田総裁が臨機応変に政策を修正できる環境づくりを後押ししたい。

(2023/5/1 05:00)

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