産業春秋／藤井「七冠」第一人者の使命

最年少の響きはもうおなじみ。将棋の藤井聡太新名人だ。最も格式と伝統ある名人位を２０歳１０カ月で奪取し、七冠に。全八冠制覇へ残るは秋に五番勝負が控える王座戦だが、進行中のトーナメントで挑戦権を得るまであと３勝だ。

特筆すべきはタイトル戦での勝負強さ。通算タイトル獲得数は１５期だがすべて制している。棋風の異なる相手や持ち時間が少なくなる中での的確な指し回しは目を見張る。

ただ藤井七冠にも数少ない挫折はあった。２０１６年に最年少の１４歳２カ月でプロ入りを果たしたが、名人挑戦につながる１８年度の順位戦Ｃ級１組では９勝１敗ながら昇級できずの憂き目に。その後の快進撃は言うまでもないが、こうした経験は糧になったはず。

次は防衛戦が続く。タイトル戦は東西の将棋会館ではなく全国を行脚するのが通例。７月１９日で２１歳の七冠にとっても体力勝負の側面がある。それでも最年少名人が各地を訪れることでのにぎわい創出効果は大きい。

今後は地方自治体によるタイトル戦開催地の“争奪戦”が起きるかも。デビュー期からのブームは衰えを知らない。将棋人気をもう一段階高みへ導くため、若き第一人者に求められる使命はまだまだ多い。