社説/春闘30年ぶり高水準 「構造的賃上げ」で好循環継続を

(2023/7/6 05:00)

連合が5日発表した2023年春闘の最終集計によると、全体の賃上げ率は3・58%(22年春闘は2・07%)と、1993年以来30年ぶりの高水準を達成した。3%台は94年以来29年ぶり。堅調な業績や人手不足、さらに賃上げをめぐる企業の意識の高まりが反映されたと評価したい。構造的なデフレからの脱却に向け、意欲的な賃上げは一過性で終わらせず24年以降も継続する必要がある。リスキリング(学び直し)などを通じた「構造的賃上げ」を実現し、経済好循環を継続させたい。

従業員300人以下の中小組合の賃上げ率も3・23%と3%台を達成し、22年春闘の1・96%から大幅に上昇した。大企業の意欲的な賃上げが中小企業にも波及した意義は大きい。

日本は賃上げが物価上昇に追い付かず、4月の実質賃金は13カ月連続で減少した。23年春闘は連合が求めた5%程度の賃上げ率に届かないものの、直近5月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)上昇率3・2%を上回る高水準の回答と評価したい。

連合と共闘する経団連の十倉雅和会長は、賃上げは「企業の社会的責務」と訴え、大企業で満額回答が相次いだ。人手不足に悩む中小企業も人材獲得に向けて積極的な賃上げに動いた。

ただ中小企業は価格転嫁が進まず、厳しい収益環境の中での賃上げだったことに留意する必要がある。経済産業省・中小企業庁が6月にまとめた3月調査によると、コスト上昇分の何割かを価格転嫁できた企業は全体の47・6%と半数に届かず、前回9月調査の46・9%と比べても微増にとどまっている。中小の賃上げ原資を増やす取引適正化の推進が強く求められる。 

岸田文雄政権は構造的賃上げに向けた労働市場改革を打ち出した。リスキリングにより労働者の能力向上や日本型職務給を確立することで、自社の生産性向上による賃上げだけでなく、成長分野への転職によっても賃金の底上げを目指すという内容だ。脱炭素やデジタル変革(DX)などの成長投資と同時に、雇用の流動性も高めることで継続的な賃上げを実現したい。

(2023/7/6 05:00)

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