社説/最低賃金の行方 中小の支払い能力に十分配慮を

(2023/7/7 05:00)

中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)は月末に2023年度の最低賃金の目安を決める。賃上げが物価上昇に追い付かない中、岸田文雄政権は全国平均で時給1000円の早期達成を目指している。先進国で見劣りする最低賃金の引き上げは急ぎたいものの、中小企業の支払い能力を十分に勘案することが求められる。「政府方針」「金額」ありきでなく、中小が持続的に賃金を引き上げられる環境整備が不可欠だ。生産性向上への支援や価格転嫁問題の是正などの課題解決を急ぎたい。

日本の最低賃金は先進国どころか韓国をも下回る。韓国の現在の最低賃金は時給9620ウォン(約1058円)と1000円を超える。日本は最低賃金の影響を受けやすい非正規雇用者が雇用の4割を占め、貴重な働き手である外国人労働者にも最低賃金が適用される。非正規雇用の処遇改善と同時に、外国人に選ばれる日本でありたい。

最低賃金は金額と同時に地域格差の是正も求められる。中央最低賃金審議会は全国を4区分していた引き上げ額の目安を3区分に再編した。中間層を増やすことで、最低賃金の底上げにつながると期待される。

他方、最低賃金には「地域別」のほか、特定の産業ごとに設定される「産業別」もある。労使が「地域別」より高額が必要と認めた場合に設定される。だが連合によると「地域別」を下回る設定もあり、本来の効力が発揮するよう是正したい。

23年度に最低賃金を時給1000円に引き上げるには、前年度比で4%増額する計算になる。22年度の最低賃金は前年度比3・3%増の961円で、金額・伸び率とも過去最大だったが、これを上回る必要がある。中小企業の収益環境は厳しく、人材獲得どころか雇用を守れないようなら元も子もない。

中小企業の支払い能力を十分に加味した最低賃金が求められる。中小が賃上げ原資を確保するための価格転嫁の推進、さらにデジタル変革(DX)による生産性向上や新たな価値創造など、中長期の視点でも中小の収益構造を強化する必要がある。

(2023/7/7 05:00)

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