産業春秋／シニア層に“働きがい改革”を

終身雇用をはじめとする日本型雇用慣行の見直しが進む中で、高い年齢層の従業員、いわゆるシニア層の処遇に多くの企業が苦心している。変化が激しいこの時代に、従業員の生活を一生涯保障する体力は、もう残っていないらしい。

シニア層の能力を生かせる転職先として、人材難に悩む中堅・中小企業などを紹介するサービスも増えている。ある企業は大手自動車メーカーのシニア人材を、同じ自動車関連の中堅企業や海外企業に紹介する事業を試験的に始めた。

一部自動車メーカーのシニア層から転職の相談を受け付け、人材データの登録を進めている。系列企業への転籍もままならなくなる中で、シニア層の転職支援という自動車メーカーが抱えていた課題の解決につながるという。

政府は労働移動の円滑化に向けた労働市場改革を、２０２３年度版「経済財政運営と改革の基本方針」（骨太の方針）の目玉に据えた。自身の経験が中堅・中小企業、ひいては地域経済の発展につながれば、シニア人材にとっても大きな喜びとなろう。

新しい環境へ飛び込むのには勇気がいる。だが労働者にも働き方ならぬ“働きがい改革”に挑戦する気概が必要な時代なのかもしれない。