物流の24年問題、“働き過ぎ防止”の人権保障へ行動変容重要

(2023/10/4 12:00)

「物流の2024年問題」のXデーが目前に迫っている。24年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働時間が原則年720時間に制限される。端的に言えばモノ運びに割くことのできる人的リソースの総量が制限される。国内のサプライチェーン(供給網)の問題と捉えられがちだが、背景には国際社会からの強い要請もある。この問題についていま一度サプライチェーン・マネジメント(SCM)の観点より考察したい。

  • 長い行列を作って待機する作業待ちの大型トレーラー

サプライチェーンはモノづくりとモノ運びからなる供給活動群だ。SCMは限りある供給能力=キャパシティーを前提としてさまざまな優先順位を判断し、全体としてサプライチェーンが機能することを目指す。もしサプライチェーンを構成する要素の供給能力が対応すべき需要を下回った場合、その要素はサプライチェーン全体の供給能力上限を決定する。いわゆる「ボトルネック」だ。物流の24年問題を国内物流網の供給能力に関するものとして捉えるならば、設定すべき課題はそのボトルネック化の回避ということになるだろう。

しかしながら、この状況が働き方改革関連法=ハードローの施行によるものであることに注目すると前記の課題設定では十分ではないことに気付く。法が求める「働き過ぎの防止」を突き詰めればビジネスパーソンの人権保障を目的としているからだ。仮にグローバルブランドを取り扱うメーカーが足元の日本市場で人権配慮を欠いた状態で活動しているものとみなされた場合、その評価は欧州など他地域での活動にも影響を及ぼす。グローバル市場からキックアウトされるリスクに鑑みればメーカーにとっても同法を順守するための行動変容がSCM上の重要課題といえよう。

国民の人権を守るのは本来国の役割だ。しかし企業の活動はすべからくグローバル・サプライチェーンに接続しており、国境を越えて人々の暮らしに影響を与えている。企業にも人権保障の役割を求める「ビジネスと人権に関する指導原則」が国連人権理事会において全会一致で支持されたのは11年のことだ。くだんの物流の24年問題はその文脈を含む点に留意したい。

◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当

(2023/10/4 12:00)

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