サプライチェーン、「捨てない」文化 企業が推進

(2024/3/27 12:00)

  • 使用済みプラスチックの再資源化工程を1台のトラックに搭載して全国各地を巡る「My Plastic Station」(著者撮影)

「ラスト・ワン・マイル」がサプライチェーン・マネジメント(SCM)の古典的課題ならば「ファースト・ワン・マイル」は現代的な課題だ。前者が消費者へと至るサプライチェーン(供給網)の終端を指すのに対し、後者は消費者を起点とする資源回収の始端を指す。循環構造へと変容しつつある現代のサプライチェーンにおける最も弱いリンクの一つである。BANDAI SPIRITS(バンダイスピリッツ)の新たな取り組みに注目しつつ、考察してみたい。

SCMの世界には「ソーシング」と「プロキュアメント」という微妙に異なる二つの概念がある。両者は共に原材料などをサプライヤーから仕入れる調達活動を指すが、前者はサプライヤー自体を探索するニュアンスを含む。従来のSCMにおけるソーシング部門の中心的役割はより良い条件で原材料を供給できるサプライヤーを探索し、交渉することであった。しかし使用済みの製品を再び資源=再生材料として用いる「循環型」のサプライチェーンにおけるサプライヤーは消費者である。おのずと調達のアプローチは異なってくる。

BANDAI SPIRITSの「My Plastic Station(マイプラスチックステーション)」は使用済みプラスチックの再資源化工程を1台のトラックに搭載して全国の小学校、イベントなどを巡る取り組みだ。回収するのはガンダムシリーズのプラモデル「ガンプラ」などの使用済みランナー(プラモデルの枠の部分)、トラックに搭載されているのは小型粉砕機と30トンクラスの成形機。わずか20秒ほどの間に新たなプラスチック製品が生み出される様子を参加者は間近に見ることができる。

再生資源調達におけるファースト・ワン・マイルの課題は多い。回収される使用済み製品の質や量の安定化が望まれることはその一例だ。しかし、最大の課題は消費者に回収行動を促すことに尽きる。その前提となる「捨てない」文化の推進役は再生資源を使いこなす技術を持つ企業が適任だ。SCMのトランスフォーメーション(変容)はモノづくりを担う企業の行動にかかっているのである。

◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当

(2024/3/27 12:00)

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