社説/台湾新総統きょう就任 半導体工場の海外分散も着実に

(2024/5/20 05:00)

台湾新総統の就任式が20日に開かれる。新総統に就く親米の民進党・頼清徳氏は「一つの中国」を認めず、中国は独立志向が強い頼氏を敵視する。中国政府はすでに台湾新政権に圧力を加えており、民主主義陣営は一段の結束強化が求められる。世界の先端半導体の9割が台湾で生産されている。中国による台湾侵攻も視野に、台湾工場の海外分散を着実に実現し、経済安全保障も確保する必要がある。

中国による台湾への威圧は、新総統就任式を待たず強まっている。中国政府は15日、台湾独立を支持する台湾の政治家・識者らを処罰する法的措置を講じると発表。16日の中ロ首脳会談では、プーチン大統領が「一つの中国」への支持を表明し、民主主義陣営を強くけん制した。中国軍の戦闘機・艦船は台湾海峡の中心線を越えて侵入しており、不測の事態に警戒したい。

新総統に就く頼氏は、今後の政権の課題として国防力の強化や、サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化、民主主義国家との関係強化などを掲げる。台湾統一へ武力行使も辞さない中国に対し、台湾の防衛力と民主主義陣営の結束力が問われる。頼氏は、他方で中国との対話の可能性を排除しておらず、新政権はその糸口も模索してほしい。

米国のレモンド商務長官は8日、中国が台湾に侵攻し、台湾積体電路製造(TSMC)を管理下に置けば、米国経済は壊滅的になると警告した。米国の先端半導体の9割がTSMC製で占める。TSMCはすでに生産拠点の海外分散に動いており、分散を着実に実現・拡大し、経済安保の強化を急ぎたい。

ドイツでは欧州初となるTSMCの工場を10月にも着工し、米アリゾナ州では25―28年に第1、第2工場が稼働し、第3工場も予定する。日本政府は熊本県に誘致した第1、第2工場に最大1・2兆円を補助し、同県の木村敬知事は第3工場の誘致に前向きな姿勢を示す。半導体工場の誘致は地域経済と関連業界に大きな経済波及効果をもたらす。日本が半導体産業で復活を果たすためにも、誘致活動には積極的に取り組んでほしい。

(2024/5/20 05:00)

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