(2019/9/20 05:00)
欧米が相次いで利下げに踏み切る中、対応が注目されていた日銀は追加緩和策の導入を見送り、金融政策の現状維持を決めた。足元の景気は回復基調にあるが、海外経済の不透明感は根強いだけに、日銀は景気下振れリスクへの備えが必要だ。
日本経済の足元を見ると、個人消費や設備投資といった内需は比較的しっかりしており、景気刺激策を必要としていない。また為替は1ドル=108円程度と円高とは言い難い水準で推移している。さらに、このところ米中の摩擦拡大で国債に買いが集まり、長期金利は日銀が誘導目標とする0%プラスマイナス0・2%を大幅に下回るマイナス0・295%まで低下した。こうした金融市場の状況もあって、日銀が利下げ追随に二の足を踏んだものとみられる。
欧米にならって日銀が利下げした場合、生保や年金の運用難に拍車がかかるうえ、金融機関の収益を一段と圧迫する。すでに地方銀行105行の半数近くが赤字に転落しており、副作用の拡大は避けたいところ。
欧州中央銀行(ECB)は先週の理事会で、欧州経済が減速する中、景気と物価上昇を下支えするため、3年半ぶりの利下げを決定した。合わせて資産購入による量的緩和策の再開も決め、政策総動員で景気対策への本気度を示した。また米連邦準備制度理事会(FRB)も18日の公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決定。7月末に次ぐ2回連続の利下げで先行きの景気後退リスクを未然に防止する姿勢を明確にした。
今回、日銀は欧米の金融当局の政策変更とは一線を画す判断を下した。しかし、米中貿易摩擦の深刻化により、中国や欧州を中心に世界経済は減速しており、関税引き上げ合戦の長期化で、さらなる景気後退リスクが高まっている。
10月には消費税率が10%に引き上げられる。加えてサウジアラビアの石油施設攻撃で原油価格の先行き不透明感が生じている。このため日銀は景気下振れリスクへの警戒を怠ることなく、必要な場合には躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和策を断行してほしい。
(2019/9/20 05:00)
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